高倉「日本人にしかできないサッカーを」 なでしこジャパン監督就任会見

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一番最初を歩く役割にプレッシャーを感じることはない

田嶋会長は「一番勝たせる可能性のある監督が高倉監督だった」と発言した 【スポーツナビ】

――どういうチームになりたいという理想は? 次のW杯や20年の東京五輪で目指すメダルの色は?

高倉 先ほども言いましたが、世界の女子サッカーは各国が力を入れていて進歩していると思いますが、なでしこジャパン(のサッカー)は日本人にしかできないサッカー。テクニックを生かして、全員がハードワークするアグレッシブなサッカーを目指したいと思っています。やはり目指すのはどの大会でも優勝です。全員がそこに向かって全力で取り組んでいくこと、日々を生きることがそこにつながると思っています。

――監督は福島市出身だが、福島に対する思いを聞かせてほしい。

高倉 福島は私がサッカーを始めた土地でもありますし、サッカーを楽しんだ土地でもあります。震災後、たくさんの方々が苦しんでいらっしゃるし、今でも友人は多く住んでいます。早く普通の生活に戻ってほしいなと感じています。その中でも私自身ができること、日本のサッカーができることというのは、大会の中で全員がすべてを懸けて戦って、最後まで諦めずに戦い、その姿を見せることで、みんなに勇気を与える試合をすることだと思っています。ぶれないで1歩1歩進んでいきたいと思っています。

――女性として初の監督だが?

高倉 選手の時からそうですけれども、一番最初を歩く役割といいますか、ずっとそうだったような気がします。ただ、一番最初を歩く役割にプレッシャーを感じることはないです。女性であるからといって引っかかるものは何もないです。選手の時はいかにうまくなるかを日々追求してきました。指導者になった今でも、いかに選手を上に引っ張るかを考えています。女性、男性は関係ないと思っています。とにかく、自分の持っているものすべてをぶつけていきたいと考えています。

――田嶋会長に聞きたいが、女性監督の意義は?

田嶋 まず、高倉監督が女性だから選ばれたわけではないと思っていますし、今井女子委員長の話を聞いていく中で、なでしこジャパンを勝たせる監督は誰なのか。これは外国人でも、日本人でもよかったし、男性でも女性でもよかった。一番勝たせる可能性のある監督が高倉監督だったと思っています。そういう面では、今まで高倉監督が素晴らしい実績を積んできたことが(今回の監督就任に)つながっていると思います。(高倉監督は)女性だから選ばれたというわけではない、それくらい素晴らしい力があると思っています。

――監督就任が決まる前にすでに(米国)遠征の予定が決まっていたが、(U−20代表監督と)兼任をする中で、どのような形で選手を選考するのか? また、この遠征の目的は?

高倉 選手選考に関しては若返りということがよく言われますが、日本代表はその時に一番良いパフォーマンスをしている人間を選んでいます。もちろんベテランは経験値からくるプレーのアドバンテージがあり、若手は若いからこその伸びしろがあります。それを考えて、うまく融合していけたらと考えています。年齢で区切ることはありませんし、パフォーマンスを見て、もっと選手をなるべく多く選択しながら、競争してもらいながら代表を作っていきたいと考えています。

 1つ1つの試合に集中して勝っていくことが大事ですが、20年の東京五輪でメダルを取ることが大きな目的になってくると思います。そのスタートをできるだけ早く切っていきたいということで、今度米国との対戦が決まっていますが、今(FIFA)ランク1位の米国と(親善試合が)できることは、これ以上ない相手だと思っています。今持っている私の力とスタッフももちろんそうですし、わたしたちの力を100%発揮できるようにまずぶつかってみて、何が足りないか、何が今の日本の力なのかを見極めていきたいと思っています。

――アジア最終予選を見てどこが足りないと思ったか? また、それを踏まえた上でどのようなチームを作ろうと思っている?

高倉 予選のときは生で観戦できたのは、最後の1試合(北朝鮮戦、1−0)だけだったんですけれども、映像で見た感想といいますか、やはり一番最初のオーストラリア戦でなかなか流れがこなかったので良い時間に得点を取ることができず、そこで負けてしまったことで、選手がというかチームが短期決戦の中で、修正して次の試合に臨む、ということができなかったのではないかと思います。ボタンの掛け違いということが言われますけれども、そこで(初戦で)つまずいたことが、本当に大きく試合に影響してしまって、残念ながら(リオ五輪の)切符を獲得することができなかったのではないかなと思います。

 日本のサッカーのスタイルというのは、みんながハードワークをして攻守ともに動いていくという中で、ボタンを掛け違えた状態でそれを修正をするのは、(日本は)非常に繊細なサッカーをするので、難しいのかなと思います。もちろん、新しい選手を見ながらチームを作っていく中で、どの選手がどの選手と合うのか、というものを細かく見ていく必要があると思いましたので、少し時間がかかるとは思いますが、全員が連動するというサッカーに、誰が当てはまっていくのかということを見ながらチームを作っていきたいと思っています。

選手にはとにかく明るく伸び伸びとサッカーをやってもらいたい

――先ほどから、従来のなでしこジャパンのパスワークを生かしたサッカーを継続して発展させたいという話だったが、一方で周囲のチームの向上もあって、研究され尽くされた面もあるのではという声もある。監督はどのように受けとめて、覆していこうと考えているか?

高倉  近年と言いますか、どこのチームも分析力がしっかりして、データを取っているチームがほとんどですので、日本サッカーだけでなく、お互いがお互いの手の内を知りながらゲームをやる場合が多いです。ゴール前を固められたりすることが多いですし、大きく蹴り込んでそこにフィジカルを生かしてゴールを狙ってくるということを多くのチームがやってくると思います。けれど、日本のスタイルは崩すことなく、いかに点を取るかということ、アタッキングサードと両ペナルティーボックスの中でどういった戦術というか、質を上げていくかということが非常に大事になってくると思います。

 例えば、アタッキングサードの中でいかに崩すかということは、シュートへの意識であったりテクニックであったりすると思いますし、コンビネーションを高めていくことであると思います。またペナルティーボックスの中の守備では、高さを生かした攻撃、クロスボールを落とした時には、それに対応する組織や個の力を上げていかなければいけないと思っています。チームを作っていきながら試合をやっていきながら、そのへんも高めていきたいと考えています。

――監督要請を受けた時に率直にどのようなことが頭に浮かんできたか。また東京五輪に向けて軸としたい選手がいれば教えてほしい。

高倉  最初にメディアの方々が私の名前を挙げてくださっていたので、もしそういうものがあったらということは心の中にはありました。最初の時代に選手として必死に戦ってきて、それを今の世代のなでしこの選手たちが大きな花を咲かせてくれて、またバトンが戻ってきたら請け負うというのを考えていたので、お話をいただいたのは大変光栄でした。簡単な仕事ではないと感じていますけれども、ぜひやらせてくださいと答えました。

(東京五輪で)中心になる選手というのは、今からリーグを見て気になる選手を呼んで、合宿で共に過ごす中で、そうした選手が出てくると思っていますので、今は誰というのは特に考えていません。

――先ほど高倉監督からもなでしこが今は少し元気がないと思われているかもしれないという話があった。あらためてスタートするなでしこジャパンの空気作りが重要になってくると思う。これまで世代別の代表を率いてきて、監督は独自の空気作り、チーム作りという点でどのようなアプローチの仕方を考えているか?

高倉 やはりチームの和というのが日本のサッカー、なでしこジャパンに欠かせないものだと思っています。チームの雰囲気作りは非常に大事だと考える中で、何か手をというとまだ考え中です。選手にはとにかく明るく伸び伸びとサッカーをやってもらいたいと思いますし、自分自身のサッカー人生に真摯に取り組んでもらいたいと思っています。失敗を繰り返しながら選手は成長するものだと思いますし、負けて悔しい思いや勝ちながら進んでいくということは、私は選手をやっていたのでよく分かっています。いつも元気で笑顔でグラウンドに出てきてほしいので、そういったところの個人個人のアプローチは合宿の中でやっていきたいと考えています。

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