リオ五輪に向け苦戦続く日本ボクシング 再生のカギは実戦研修と外向性

善理俊哉

WSB、APBといったイベントが発足

旧アマボクシングはプロ式のイベントを立ち上げ、五輪出場権も売りにし ている 【(C)AIBA】

 それでも、リオ五輪予選が厳しい戦いになる予兆はあった。世界の五輪ボクシングを統括するAIBA(国際ボクシング協会)はWSB(ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング=チーム制のリーグ戦)とAPB(AIBAプロボクシング=既存のプロボクシングと類似した個人競技)という2つのプロボクシングイベントを発足。活性化のため、それぞれの参加選手には五輪出場の枠を設け、その分、日本で「アマチュアボクシング」と慣用表現される既存のボクシング競技(正式名称=オープンボクシング)の枠を削った。APBにもWSBにも結局参加選手のいない日本の可能性は、大きく狭まったのだ。

 ただし、ふたを開けたら必ずしもマイナスにはならなかった。APBで戦うには、オープンボクシングよりも2オンス小さなグローブで、最長12ラウンドをこなさなければならず、参加選手は異なるルールの同時進行に苦労している。技術や感覚が中途半端になることを懸念する声も多く、何より参加選手は本家のオープンボクシングと疎遠になりがち。日本のトップ選手は、五輪予選を含めた国際大会で、強豪国の一番手を回避できるケースも増えたのだ。

東京五輪に向け新しい強化方針を求む

 見つめ直すべきは、日本が外向性を低下させていることだろう。たとえばAIBAが今年2月、プロボクサーの五輪出場への全面開放を提案したが、日本ボクシング連盟の山根明会長は「現時点で日本が従う可能性はゼロ。プロ・アマがごっちゃになる」と一蹴した。

 確かに、ボクシング界で築かれた秩序を破壊する改革案だが、ロンドン五輪前に立ち上がった山根政権の強みは、慎重かつ大胆な改革で、極端な閉鎖社会だった日本の「アマチュアボクシング界」の外交性を高めたことで、それが「世界で勝ちたい選手たち」の士気を高めたのだ。プロボクシング界側の協会長である渡辺均氏は「主導権がプロに移るわけではないので、相乗効果を意識して関わりたい」と、案が通った際の連携を望んでいる。ここでも双方のボクシング組織が「敬意を持った利用のし合い」をしてもよいのではないだろうか。

 リオ五輪では少なからず、日本ボクシングに黄信号が点されることになるだろう。2020年東京五輪を前に、現実的なスランプ打開をイメージするのであれば、先述したロンドン五輪のピークを再現することが必要ではないかと思えてくる。

 現在は中学生の選手たちまでもが、夢に「東京五輪」を口にしている。これを決して遮断するべきではないが、東京五輪で現実的に表彰台入りの可能性を持っているのは、リオ五輪予選で苦戦している今のトップ選手たちなのだ。小中学生の実戦教育が発展を続ける日本ボクシング界。次に求められているのは、社会人選手への実戦研修だろう。最低限、「大きな国際大会の調整を小さな国際大会で行う」というヨーロッパ式の強化政策は取り入れたいところだ。

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著者プロフィール

1981年埼玉県生まれ。中央大学在学中からライター活動始め、 ボクシングを中心に格闘技全般、五輪スポーツのほかに、海外渡航を生かした外国文化などを主に執筆。井上尚弥と父・真吾氏の自伝『真っすぐに生きる。』(扶桑社)を企画・構成。過去の連載には『GONG格闘技』(イースト・プレス社)での『村田諒太、黄金の問題児』などがある

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