リオ五輪に向け苦戦続く日本ボクシング 再生のカギは実戦研修と外向性
WSB、APBといったイベントが発足
旧アマボクシングはプロ式のイベントを立ち上げ、五輪出場権も売りにし ている 【(C)AIBA】
ただし、ふたを開けたら必ずしもマイナスにはならなかった。APBで戦うには、オープンボクシングよりも2オンス小さなグローブで、最長12ラウンドをこなさなければならず、参加選手は異なるルールの同時進行に苦労している。技術や感覚が中途半端になることを懸念する声も多く、何より参加選手は本家のオープンボクシングと疎遠になりがち。日本のトップ選手は、五輪予選を含めた国際大会で、強豪国の一番手を回避できるケースも増えたのだ。
東京五輪に向け新しい強化方針を求む
確かに、ボクシング界で築かれた秩序を破壊する改革案だが、ロンドン五輪前に立ち上がった山根政権の強みは、慎重かつ大胆な改革で、極端な閉鎖社会だった日本の「アマチュアボクシング界」の外交性を高めたことで、それが「世界で勝ちたい選手たち」の士気を高めたのだ。プロボクシング界側の協会長である渡辺均氏は「主導権がプロに移るわけではないので、相乗効果を意識して関わりたい」と、案が通った際の連携を望んでいる。ここでも双方のボクシング組織が「敬意を持った利用のし合い」をしてもよいのではないだろうか。
リオ五輪では少なからず、日本ボクシングに黄信号が点されることになるだろう。2020年東京五輪を前に、現実的なスランプ打開をイメージするのであれば、先述したロンドン五輪のピークを再現することが必要ではないかと思えてくる。
現在は中学生の選手たちまでもが、夢に「東京五輪」を口にしている。これを決して遮断するべきではないが、東京五輪で現実的に表彰台入りの可能性を持っているのは、リオ五輪予選で苦戦している今のトップ選手たちなのだ。小中学生の実戦教育が発展を続ける日本ボクシング界。次に求められているのは、社会人選手への実戦研修だろう。最低限、「大きな国際大会の調整を小さな国際大会で行う」というヨーロッパ式の強化政策は取り入れたいところだ。