リオ五輪に向け苦戦続く日本ボクシング 再生のカギは実戦研修と外向性
五輪出場決定は成松の1名のみ
リオ五輪の大陸予選で成松が出場権を確保。出場者ゼロの窮地は免れた 【善理俊哉】
今回の代表候補の中で、最も注目度が高いのは中京高校の新任教師・男子フライ級の田中亮明だろう。
足のつま先から拳まで連動して放つような渾身の左ストレートを武器に、昨年は同五輪のテストイベントでも優勝。プロボクシングでWBO世界ミニマム級王者に就いた田中恒成を実弟に持つこともあって、人間ドラマとしても興味深い選手だ。
中国で大陸予選参加時の田中亮明。席を置いた大学と高校の顧問二人で指導体制を築く 【善理俊哉】
田中の弱点は足。というより、この競技における日本人の弱点が足運びだといっていい。3分3ラウンドの短期決戦で、日本の選手は懐の深い選手をつかまえきれず、田中も最近にようやく、こうした足運びにメスを入れ始めた段階だ。3月まで籍を置いていた駒澤大学ボクシング部の小山田裕二監督は、足の向きなどから改善を試みたが、「国際舞台で戦うには、結局、試合経験を埋められない」と吐露した。
ロンドン時は川内の影響で社会人選手に刺激
ロンドン五輪でメダルを獲得した清水と村田。ボクシングでは半世紀ぶりの表彰台入りだった 【善理俊哉】
やがて村田が2011年世界選手権で日本人初の銀メダルを獲得。当時は日本のトップメンバー全体の充実度が高く、競技者たちはプロボクシングに対して優越感さえ抱いていた。それが村田の「“アマチュア”って言葉が嫌い。プロに負けている要素がないのに、プロ未満だと思われる」という言葉にもつながっている。
ユース五輪や女子世界選手権でメダル獲得も
「高校からボクシングを始めた選手が、外国人に圧倒されて帰ってくる」が当たり前だった若年層対象の国際大会でも、近年、日本のホープたちはかつてない活躍を見せている。
2014年南京ユース五輪の出場を3選手が果たし、鈴木稔弘(当時・駿台学園高校)が銀メダル、村田昴(当時・貴志川高校)が銅メダルを獲得した。2014年アジア競技大会でも、日本はボクシングの銅メダルを3つ獲得。この数も近年では最も多い。同年、和田まどか(芦屋大学)は女子世界選手権で日本人初の表彰台入り(銅メダル)を果たした。