ミルコ“17年越し悲願”ジュエラーで桜V
4着メジャーエンブレム敗因はスタート

3ハロン33秒0、驚異の切れ味

ミルコの期待通りジュエラー(中)の末脚が爆発! 上がり3ハロンは驚異の33秒0だ
ミルコの期待通りジュエラー(中)の末脚が爆発! 上がり3ハロンは驚異の33秒0だ【スポーツナビ】

 スタートはダッシュがつかず、いきなり後方2番手からの序盤。お世辞にもゲートが上手いとは言えないジュエラーだけに、これは“いつも通り”とも言えるのだが、藤岡健調教師いわく「想定よりも少し後ろ」だった。いくら以前とは違ってコーナーが大きく、直線が長くなった阪神マイルコースといっても、最大のライバル・メジャーエンブレムは圧倒的なスピード先行が持ち味の馬。個人的な話で恐縮だが、ジュエラーの3連単アタマ軸の馬券を握っていた筆者としても「後ろ過ぎない? 大丈夫?」とハラハラしたものだ。


 だが、ミルコは違った。


「スタートでダッシュしなかったけど、この馬はすごい瞬発力があります。だから、このポジションで大丈夫と思っていたし、ユタカさんが近くにいたのも良かった。だんだんペースも速くなって一緒に上がっていけました」


 桜花賞最多5勝をマークする桜男・武豊が駆るレッドアヴァンセが3〜4コーナーで押し上げていったのに合わせて、ミルコ&ジュエラーもペースアップ。「残り400メートルで外に出したら、すごく伸びてくれました」とエンジンがかかると、片や7番手という“後方”からの競馬となっていたメジャーエンブレムをあっさりパス。ゴールめがけて一直線に繰り出した末脚は、3ハロン33秒0の驚異の切れ味。ミルコが惚れ込み、信頼するのがあらためて分かる最後の脚だった。

ミルコを後押しした2つの家族

 実はミルコには、負けられない理由がもう1つあった。


「今日は下の娘の誕生日だったんです。レース前に『お父さん、勝つかもしれないよ』って娘には言っていたから本当にうれしい。みんな、すごい喜んでくれました(笑)」


 そして、ミルコにはまた、大切な別の“家族”もいる。このファミリーのおかげで今のミルコがいると言っても過言ではないだろう。それは2003年の皐月賞&日本ダービー二冠馬ネオユニヴァースから連なる血統だ。ネオユニヴァースはミルコに外国人ジョッキーとして初の日本ダービー制覇をもたらし、その子ヴィクトワールピサは東日本大震災があった年にミルコとのコンビで日本馬初のドバイワールドカップ優勝という快挙を成し遂げ、日本全国を勇気付けた。そして今、悲願中の悲願を叶えてくれたジュエラーは、そのヴィクトワールピサの子なのである。


 父→子→孫と、3代続けてのGI制覇に「もう僕の家族です」と満面の笑みを浮かべたミルコ。17年分の悲願にこの2つのファミリーの後押しが加わったからこそ、2センチだけシンハライトよりも前に出ることができた――そう考えてしまうのは、ちょっとロマンチックすぎるだろうか。

次走はオークス、名牝の道へ

次走はオークス、名牝の道へと歩み続けることはできるか
次走はオークス、名牝の道へと歩み続けることはできるか【スポーツナビ】

 激戦を制し桜の女王となったミルコ&ジュエラーの次なる目標は、もちろん二冠目、5月22日のGIオークス(東京競馬場2400メートル芝)になる。


「距離はどうしよう(苦笑)。まだ分からないですけど、賢い馬でハートも強いから、一緒に頑張ります」と、やや控えめな鞍上に代わって、オークスに向けても強気の姿勢を崩さなかったのが藤岡健調教師だ。


「柔らかくて長距離にも対応できる馬体をしています。もともと長めの距離でも大丈夫と思っていたので、オークス、秋の秋華賞と、“名牝”の道を歩めるように頑張っていくつもりです」


 シンハライトとは1勝1敗でいずれもハナ差と互角の勝負を展開しており、メジャーエンブレムもこのままでは終わらせないだろう。3歳牝馬の勢力図はメジャーエンブレム1強から3強時代へと突入した。オークスで再び2頭を蹴散らし世代最強を証明するために、ジュエラーはその名(宝石職人)のとおり自慢の末脚をさらに磨き上げるだけ。そうすれば、府中の舞台でもきっとミルコがその末脚を最大級に輝かせてくれる。

瞬発力勝負では分が悪く……

いつもより後方からの競馬となったメジャーエンブレム(左から2頭目)、瞬発力勝負は分が悪かった
いつもより後方からの競馬となったメジャーエンブレム(左から2頭目)、瞬発力勝負は分が悪かった【スポーツナビ】

 一方、断然人気を裏切ってしまったのがメジャーエンブレムだ。敗因を挙げるとすれば、それはもうスタートからの前半戦が全てではないだろうか。ゲートの出のタイミングが合わなかったのか、先手を取れず7番手の位置取り。この馬とすれば“後ろ過ぎる”ポジションからの競馬となってしまった。


「きょうはスタートが速くなかったからあのポジションでした」とルメール。また「最後は少し脚を使いましたが、基本的に最後の脚はあまり速くなく、最初から最後まで同じペースで走る馬。だから、きょうはレースが向かなかった」と悔やんだように、メジャーエンブレムは父ダイワメジャー、叔母ダイワスカーレットのように絶対的なスピードで押し切っていくタイプ。中団からの差し比べでは分が悪かった。


 田村調教師もこのスタートを何度も悔やんでいたが、「応援していただいたファンの方たちには申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、これも競馬。次で巻き返したい」と、気持ちを切り替えて反撃を誓っている。オークスとは明言しなかったが、順調ならば樫の舞台に挑むことになるだろう。再びメジャー1強に引き戻せるか、正念場の一戦になる。


(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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