古巣愛を超えて勝利に徹したクロップ監督 敵地でのEL第1戦は上々の結果に

寺沢薫

素晴らしい結果を残したリバプール

試合はリバプールがオリギのゴールで先制。後半早々に追いつかれたものの、敵地での第1戦のドローは悪くない結果だ 【写真:ロイター/アフロ】

 ボスの愛と情熱が選手たちに伝わったのか、肝心の試合に関しても、リバプールは大きな成果を挙げることができた。後半開始直後にコーナーキックからマッツ・フンメルスに同点ゴールを許し、オリギの先制点が帳消しにされてしまったものの、敵地での第1戦で1−1のドローは悪くない結果だ。決勝トーナメント2回戦で、現在プレミアリーグで2位のトッテナムがドルトムントとの第1戦を0−3で落としたこと、戦前から「アンフィールドでの第2戦に望みをつなぐ敗戦であれば御の字」という論調だったことを思い出せば、素晴らしい結果とも言える。

『スカイスポーツ』は、不安定さを懸念されていたママドゥ・サコーとデヤン・ロブレンのセンターバックコンビが「ピエール・エメリク・オーバメヤンを撃退」したことを高く評価した。地元紙『リバプール・エコー』は「リバプールは自信満々にプレーし、クロップ就任後、最も完成したパフォーマンスを見せた」として、エースであるダニエル・スタリッジではなく若いオリギを先発させたこの日のクロップ采配を「マスタークラス」とたたえた。

 確かに、苦手とするセットプレーからの失点はお粗末だった。ゾーンディフェンスで小柄なアダム・ララーナをペナルティーボックス内の中央に置き、彼とフンメルスのミスマッチが失点の原因になったことはどのメディアもチクリと指摘していたが、ピッチ外の喧噪(けんそう)に影響されず、世界中が注目した舞台でしっかりと自分流を古巣に見せつけたクロップに対する第1戦の評価はおおむね上々だ。

古巣を倒し、EL優勝へ

かつての教え子、香川真司(左)とあいさつするクロップ 【写真:ロイター/アフロ】

 状況的にはまだイーブン。この日は主にフィニッシュの面でベストな出来ではなかったドルトムントには、本来アウェーでもゴールを奪える力が十分にある。だが、1週間後のリターンレグでは、黄色の壁から聞こえてきた『You’ll Never Walk Alone』が今度は赤い集団の歌声となってクロップと仲間たちを後押ししてくれるのだから、リバプールの勝機は必ずある。

 クロップはドルトムントから大きな愛を受け、彼もまたドルトムントを愛してやまないことは確かである。しかし、もしクロップが人生においてドルトムント時代以上の愛をもらうことがないと考えていたとしたら、それは勘違いだ。リバプールでも、彼はすでに特別な存在になりつつある。古巣を倒し、ELのトロフィーを獲得してチームを来季のCLに連れていくことがその第一歩になれば、こんなにも美しいことはない。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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