CL準々決勝の4カードを読み解く 幸運を授かったレアルとバイエルン

いよいよ行われるCL準々決勝

CL準々決勝で実現する、バルセロナ対アトレティコ・マドリーの同国対決に注目が集まっている 【Getty Images】

 今季最後の代表戦が世界各地で行われている。各国リーグの中断期間が終われば、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)はいよいよ準々決勝。ファーストレグが4月5日と6日、セカンドレグが4月12日、13日に行われる。

 元バルセロナのジャンルカ・ザンブロッタが行った抽選によって実現した4カードのうち、注目度が高いのは最も実力が拮抗(きっこう)したマンチェスター・シティ対パリ・サンジェルマン(PSG)、そしてバルセロナ対アトレティコ・マドリーの同国対決だろう。残るレアル・マドリー対ボルフスブルク、バイエルン・ミュンヘン対ベンフィカの2試合は、もちろん戦ってみなければ分からないとはいえ、共に実力で上回る前者が圧倒的に有利と見られている。

 抽選が行われる前の時点では、どのチームも実力的に最も劣るベンフィカかボルフスブルクとの対戦を望んでいた。くしくもその幸運を授かったのは、多くの不安要素を抱えている2チームだった。

パフォーマンスが不安定なレアル・マドリー

レアル・マドリーはジダンが監督に就任して以来、波の激しいパフォーマンスを繰り返してきた 【写真:ロイター/アフロ】

 スペイン国王杯で失格となり、リーガ・エスパニョーラでも首位バルセロナに10ポイント差をつけられ、実質的に優勝の可能性を失ったレアル・マドリーは、相手に恵まれた上に本拠地サンティアゴ・ベルナベウで勝負を決められるアドバンテージも得た。

 ジネディーヌ・ジダンが監督に就任して以降、レアル・マドリーは素晴らしいプレーを見せたと思ったら、その次の試合でひどい内容を露呈するという具合に、波の激しいパフォーマンスを繰り返している。3月13日に行われたラス・パルマスとのアウェー戦で、2−1と勝利したものの最悪のイメージを残しながら、翌週には強豪セビージャが手も足も出ないほど圧倒的なゴールラッシュを見せる(4−0)など、まったくもってパフォーマンスが安定しないのだ。

 ローマとのCL決勝トーナメント1回戦では、スコアこそ2試合合計で4−0と完勝したものの、盤石の勝利と言える内容ではなかった。アウェーのファーストレグで2−0と先勝したことで余裕を得たにもかかわらず、ホームのセカンドレグでは予想を上回る苦戦を強いられ、相手に何度もチャンスを与えていたからだ。

 現在のチームはカリム・ベンゼマの復帰により、再びそろった前線のトリデンテ(クリスティアーノ・ロナウド、ギャレス・ベイル、ベンゼマ)、そしてダビド・デ・ヘアを獲得する予定だったフロレンティーノ・ペレス会長に、開幕当初からうれしい驚きを与えてきた偉大なGKケイラー・ナバスによって支えられている。ジダンが中盤の底にカゼミーロを起用し、トニ・クロースには本来の役割である攻撃面にプレーの比重を置かせたことで、攻守のバランスも以前より随分と改善されてきた。

 それでもここまでクラブの歴史にふさわしいシーズンを送っているとは言い難く、昨夏に契約したばかりの監督をあっさり解任してしまうようなチームを、CLの優勝候補に挙げる声はほとんど聞こえてこない。

 だが、最も手ごわい5チームとの対戦を逃れただけでなく、勝負を決するセカンドレグを地元マドリーで戦えるアドバンテージも得たことで、「ウンデシマ(スペイン語で11冠目の意)」獲得へ希望が出てきたと言える。ペレスの親しい友人であるスペイン人オーナーが率いるボルフスブルクにも、レアル・マドリーにとって危険な存在となり得る選手はいるが、それでも両チームの実力差は明白だ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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