内容にそぐわぬ結果を得たアルゼンチン 勝つには勝ったが、課題は山積み

危険な偽りの楽観論

試合後、マルティーノ監督(左)は勝利を喜ぶコメントを残した 【写真:ロイター/アフロ】

 このような状況下、ボールポゼッションを重視した健全なプレースタイルを志向してきたチームは徐々にほころびを見せるようになった。先発メンバーが移り変わる中でサベーラ時代に築いたオートマティズムは失われ、イレギュラーなプレーを繰り返す中でチームは自信を失いつつある。

 今のアルゼンチンはメッシのタレントやディ・マリアのスピードと正確なシュート、アグエロの局面打開力、イグアインの決定力、時にディフェンス陣の勇敢なプレー(今回はガブリエル・メルカドが2試合連続でゴールを決めた)といった個の力に依存するばかりで、チームとしての機能性は二の次になってしまっているのだ。

 内容にそぐわぬ結果を手にしたことで、偽りの楽観論に安堵(あんど)してしまうことはフットボールではよくあることだ。現在のアルゼンチンはまさにその状態に陥っていると言える。

「今日の試合のおかげで、6月のコパ・アメリカに落ち着いて臨むことができる」

 ボリビア戦後にマルティーノはそう言っていたが、代表監督である彼がその後に控えるウルグアイ、ベネズエラとの南米予選のことまで考慮せず、そのようなコメントを発するのは稀なことだ。

 マルティーノは以前も、いくらポジティブに捉えても無難なプレーができたとしか言えないような試合の出来を誉め称えることがあった。今回も彼はチームが手堅く戦い、ライバルの攻撃を抑え込んだことを強調していたが、それは弱小国ボリビア相手にはできて当然のことだった。

 6月のコパ・アメリカでもアルゼンチンは優勝候補に挙げられるはずだ。ただその根拠は、苦戦することなどないはずのロシアへ向けた歩みではなく、過去の実績や選手たちのネームバリューにあるのだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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