高橋大輔を導く『道』となった銅メダル 写真で切り取るフィギュアの記憶
【写真:Mike Powell/アフロ】
すぐに起き上がった目に迷いはありません。残る2本のトリプルアクセルを降りると、すべてのジャンプをしっかりと片足で着氷させました。そして見せ場はステップ。イタリア映画『道』のテーマ曲で、遊び心あふれる大道芸のジェスチャーや、恋の苦しさ、別れの切なさへとドラマティックに展開していきます。
「人間の喜怒哀楽が詰まったプログラム。その心を表現したい」
高橋の23年分の思いがあふれ出ていきました。
FSは156.98点で、総合247.23点の銅メダル。しかも演技面の得点は84.50点で全体の首位でした。
「ただとにかく幸せです。4回転は失敗したけれど、昨シーズンにケガをしてもここまでたどり着いたこと、日本男子初のメダルを取れたことが誇りです」
【写真:Mike Powell/アフロ】
「4回転は、自分の理想に向かってやったので後悔はないです。むしろ良い経験。まだまだできる、まだまだ第一線でやっていきたいと感じました。だから五輪が終わったからって(引退を)決めるんじゃなくて、もういいなって思えるまでやることにします」
引退さえ覚悟していたバンクーバー五輪。しかし、多くの支えと先輩たちの思いをつなげたこの銅メダルは、高橋自身の新たなスケート人生へとつながりました。このメダルこそが、10年世界選手権王者、そして12年グランプリファイナル王者という未来へ高橋を導く『道』だったのです。