憶測やうわさが蔓延するスペインメディア リーガの優勝争い、早すぎた決着

CL出場権争いは盛り上がっているが……

優勝争いの見どころがついえてしまったリーガ。話題はピッチ外の小ネタやうわさ話に移行している 【Getty Images】

 アトレティコ・マドリーとレアル・マドリーは何週間も前から2位の座を争い、今週末には5位のセビージャが4位ビジャレアルに競り勝ったことで、来季のチャンピオンズリーグ(CL)の出場権争いも盛り上がってきた。しかし、最も重要な見どころであるリーガ・エスパニョーラのタイトル争いについて言えば、今季はシーズン前半から結果が見えていたように思える。

 サンティアゴ・ベルナベウで行われた昨年11月のエル・クラシコで、バルセロナがリオネル・メッシをベンチに温存しながら(後半12分から出場)、レアル・マドリーに4−0と大勝した試合から、既に今季の優勝争いは終わりに向かいはじめていたと言っていい。

 大差がついたスコアだけでなく、内容的にもバルセロナがはるかに上回ったあの大敗は、開幕前に就任したばかりのラファエル・ベニテス前監督をシーズン途中で解任するというレアル・マドリーの惨状を引き起こす一因にもなった。

 豊富な経験と実績を持つ上、マドリーっ子でクラブ出身者でもあるベニテスのような監督への信頼をあっさり失い、十分な時間も与えぬうちに見限った代償はとても大きかった。カスティージャ(Bチーム)の監督として2018年まで契約を結び、十分な経験を積んだ上でトップチームを任せるはずだったジネディーヌ・ジダンに早すぎる段階で大役を強いることになったからだ。

 この緊急事態を任されたジダンは、自らが会見のたびに口にしている通り、来季も続投するかどうかも分からない状況にある。もちろん彼がもし監督を退任したとしても、クラブに残って何らかの有力ポストに就くことは間違いないのだが。

 出場停止中のデニス・チェリシェフを起用するミスによって失格処分となった国王杯に続き、リーガでも早々に優勝争いから脱落したレアル・マドリーとは対照的に、2位のアトレティコ・マドリーは可能な限り上位を目指して最善を尽くしてきた。実際、彼らは現時点で、ヨーロッパの他国リーグの大半の首位チームより多くの勝ち点を積み重ねている。

 しかもアトレティコ・マドリーはカンプノウでのバルセロナ戦にて、前半終了間際にフィリペ・ルイスを退場で失いながら大いに健闘したのだが、結局バルセロナにはかなわなかった。

ピッチ外の小ネタが主要ニュースのように扱われる

 たとえシーズン終了時にふさわしい結果が伴っていなかったとしても、間違いなくバルセロナは現時点で世界最強のチームだ。選手たちが擁する卓越したテクニック、そして自分たちの強さに対する絶対的な自信をベースにあらゆる記録を破り続けている現状を、ルイス・エンリケ監督は「甘美なひと時」と表現している。

 素晴らしい選手をそろえ、さらに素晴らしい選手を補強し、世界中で人気を博し、時に試合が一方的すぎて退屈に見えてしまうことすらある。それくらいバルセロナはリーガ・エスパニョーラのライバル、ひいては世界中のチームに大きな差をつけているのだ。

 勝ち点について言えばもっと分かりやすい。バルセロナは9試合を残して2位アトレティコ・マドリーに8ポイント、3位レアル・マドリーには12ポイント差をつけている。さらに直接対決の戦績でもライバルを上回っているため、実質的にはアトレティコ・マドリーに9ポイント、レアル・マドリーには13ポイント差をつけていることになる。

 それはつまり、アトレティコ・マドリーが逆転するには残る9試合で毎節1ポイントずつ差を縮めていく必要があることを意味する。レアル・マドリーに至っては、バルセロナが残り27ポイントのうち14ポイント、つまり半分以上の勝ち点を取りこぼさない限り優勝の可能性が生じない。しかもまだカンプノウでの直接対決も残っているのだから、置かれた状況は限りなく厳しい。

 これだけプレー内容、勝ち点共に大差がついてしまい、優勝争いという見どころがなくなってしまったリーガでは、ジェラール・ピケは動画配信アプリ「Periscope」の使用を控えるべきかどうか、ネイマールが妹の誕生パーティーに出席するために5枚目の警告を受け、出場停止中にブラジルに帰国するのは許されることなのかどうかといった、通常なら話題の中心にはならないピッチ外の小ネタが主要ニュースのように扱われるようになっている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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