F1・2016年シーズンはどうなる? 今宮純が予想する「キーワード」
「密集」スタートの興奮がよみがえる
フルグリッド26台には満たないが、今年はエントリー22台。さらに合同テストからタイム差がぐっと縮まったのが大きな変化だ。3年目を迎えたパワーユニットは熟成開発が進み、発進加速性能も向上。迫力ある「密集スタート」が毎戦、展開されるはずだ。第1コーナーのバトルが激化、オープニングラップ順位変動もめまぐるしく、セーフティーカー出動率も高まるか。開幕戦の舞台アルバートパーク、最初のコーナーを誰が取るのか。何台が通過できずに終わるのか。F1バトルの原点はスタートにある──。
「ルノー対ホンダ」伸びしろが鍵に
だが公式コメントの裏には、もう少し高い目標があるはずだ。ルノーは開発の焦点をエンジン本体に向けてイルモア・エンジニアリングと連携。さらにターボ・コンプレッサーに着手する。NA(自然吸気)時代からルノーはドライバビリティ重視。今年は著しい改善があったことをユーザーチームであるレッドブルが確認している。レッドブルの“コーナリングマシン”「RB12」の強みを活かせるコースでは、「TAGホイヤー」の名を冠したルノー製PUが躍進する可能性はある。ワークスチームはチューニング開発に専念、中盤までに人材スタッフ体制を再整備、17年の新規定に向けてリソースを集中する動きになる。
ホンダは第3期F1経験者の長谷川祐介氏を筆頭に、無限ホンダ時代からモータースポーツ部門にいた中村聡氏で固め、体制は大きく変わった。具体的な変化は最終テストに現れた。昨年はドライバー1人あたり年間4基までのパワーユニットを12基まで投入したホンダ。今季は信頼性を最優先テーマにして取り組み、昨年の欠点を見直すところからスタートした。ダイナモ室のパワー数値より、まずはコース上の信頼性。それが確保されなければドライバーからの信頼を得られない。ふたりとも体験を通じて肌で知っているからこそ、まず信頼性の追求を徹底した。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトン、マクラーレン側に「2年目の改革」をアピールできたはずだ。
今季のパワーユニット「RA616H」は前体制下で完成したもの。新体制によって、いかにモディファイしていくか。16年はパワーユニット開発規制が緩和され、開発に使えるトークン数は32と増やされ、凍結箇所も減る。いつ、どこに、どんなタマを入れるか、現場で戦ってきた新リーダーによる新たな挑戦は始まったばかり。中盤まで一歩ずつ、下がることなく前に進むと信じている。
(文=今宮純)