羽生、フェルナンデスに続くのは誰か!? 幕を開けた「300点超え時代」

野口美恵

チャンがFS歴代2位の得点をマーク

四大陸選手権でチャン(右)はFS歴代2位の得点をマーク。25歳になってもまだまだ進化を続けている 【坂本清】

 この勢いのままに羽生は次のGPファイナルで330.43点をたたき出し、さらに記録を更新。フェルナンデスも1月の欧州選手権で、「SPで2本、FSで3本」の4回転を入れる構成で、300点を超えた。

 こうなると、チャンも黙ってはいられない。「4回転は1本で十分」と言っていた宣言を撤回し、「FSで4回転2本、トリプルアクセル2本」という、彼にとって大技を2つ増やす構成に変更したのだ。

 迎えた2月の四大陸選手権のFS。チャンは覚醒的な演技を見せた。冒頭の「4回転トウループ+3回転トウループ」、「トリプルアクセル」、「4回転トウループ」すべてが空を舞うかのような、雄大な飛躍。全部のジャンプをクリーンに成功し、さらに基礎力に支えられたなめらかな滑りで、ショパンの名曲を奏でる。技術点106.85点、演技構成点97.14点で、合計203.99点。羽生に次ぐ、FSの歴代2位記録となった。

「自分はこのレベルの技術と演技ができるという自信になった。あとはボストンの世界選手権で、やるべき仕事をやるだけ。25歳になっても、まだまだ進化していけると感じている」とチャン。若々しい笑顔を見せた。

焦点は「何で高得点を稼ぐか」

 では、次なる300点超えは誰だろうか。

 羽生とフェルナンデスが300点超えを果たしたプログラムは、ともに4回転を「SPで2本、FSで3本」という構成。SPで100点超え、FSで200点超えを出すためには、これが1つの羅針盤になるだろう。

 あとは各選手ごとに「自分の長所を生かし、何で高得点を稼ぐか」が焦点になる。具体的に、方向性は3つ。(1)難しい4回転を増やし技術の得点を上げること、(2)技の質を上げてGOEの加点を伸ばすこと、(3)滑りや表現を磨いてPCSを伸ばすこと、だ。

 チャンであれば、4回転は「SPで1本、FSで2本」の構成で、GOEの加点や演技構成を伸ばすことになるだろう。金博洋ならば、4回転ルッツを武器にさらに技術の得点を伸ばし、演技構成点で及ばない部分を補うことができる。

4回転ループを練習では降りている宇野も、ジャンプ構成の工夫次第では300点超えを視野に入れることができる 【坂本清】

 他にも、いま4回転ルッツを練習中の無良、4回転ループを練習で降りている宇野昌磨(中京大中京高)らも、ジャンプ構成の工夫次第では、300点を視野に入れることができる。

 いずれにしても「300点超え時代」の幕は開けた。「ミスなく滑る」時代から、「超難しい4回転を入れて、かつ、ミスなく滑る」という時代へ。これを負担と感じるか、夢冒険と感じるかは、選手の闘争心にかかっている。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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