鳥谷の連続出場がもたらすモヤモヤ感 金本監督に求められる決断のとき

山田隆道

初めて見た笑顔の鳥谷

春季キャンプで大きく変わった主将・鳥谷。練習中にも大きな声を出し、チームメイトを鼓舞し続ける 【写真は共同】

 数年前、私が宜野座村の阪神キャンプを最後まで見学したあと、車で30分以上かけて北谷町の中日キャンプに移動すると、もう暗くなりかけているにもかかわらず、まだノックを受けているアライバコンビ(荒木雅博と井端弘和)の姿を見たことがあった。当時のアライバはすでにベテラン選手。そんな彼らでもこんなに遅い時間まで練習しているのかと感心すると同時に、阪神は練習量が少ないのではないかと不安になったものだ。

 しかし、金本知憲新監督率いる今年の阪神キャンプは以前に比べて確実に練習量が増えており、さらに選手間にはこれまでにない緊張感が漂っている。バット片手に動き回る金本監督の迫力が、周囲に良い意味でのプレッシャーを与えているのだろう。

 そんな中、チームリーダー・鳥谷敬が目立っていた。事前の情報で鳥谷の雰囲気が変わったという話は聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 練習中、幾度となく鳥谷の大きな声が聞こえてくる。現役時代の金本監督が新井貴浩をいじりまくっていたように、その弟である新井良太にヤジを飛ばしたり、他の後輩選手を鼓舞したりする鳥谷の姿は実に新鮮だった。もともと練習量自体は豊富だったが、こんなに笑顔を浮かべているところを見るのは初めてだ。スポーツニッポン大阪版(2月9日付)が「超変革」ならぬ「鳥変革」だと書いたのもうなずける。

ポスト鳥谷筆頭、北條に出番がない

 鳥谷がこれだけ元気だと、確かに今年の活躍には期待してしまう。しかし、その一方で今年35歳になる鳥谷の年齢はやはり気になってしまう。数年後のチームを考えた場合、彼の後釜になる新たなショートはいったい誰になるのだろうか。

 現在の筆頭格は高卒4年目の北條史也だろう。藤浪晋太郎と同年齢である北條は、光星学院高(現・八戸学院光星高)時代に甲子園で大活躍した。他球団の同世代選手を見渡してみても、北海道日本ハム・大谷翔平はもちろん、同じ光星学院のチームメイトだった田村龍弘も千葉ロッテですでに頭角を現している。埼玉西武の森友哉にいたっては、1学年下である。

 一方の北條は昨年初めて1軍昇格を経験したものの、わずか1試合に代打出場しただけで2軍に再降格した。現状では、先述した同世代の選手より出遅れてしまっている。

 もっとも、だからといって彼が期待されていないわけではない。昨季も2軍ではショートのレギュラー格として試合経験を積んでおり、今年のキャンプでも1軍に帯同して鳥谷とともに練習に励んでいる。実際、体もずいぶん大きくなった。

 しかし、1軍のショートには鳥谷という壁が立ちはだかっているため、彼が元気であればあるほど、北條はなかなか試合に出られない。もちろんレギュラー争いは正当な競争の結果なのだから、それも仕方ないことだ。いくら北條が期待されていると言っても、現段階で鳥谷に勝っているわけではない。ここまでの対外試合でも何度かミスがあった。

 さらに、鳥谷の場合は昨季終了時点でプロ野球歴代3位となる1609試合連続出場、同4位となる575試合連続フルイニング出場の記録を継続中だ。そのため、鳥谷が休養などでスタメンを外れることもなければ、大差がついて勝敗がほぼ決したような試合の終盤でもベンチに退くことはない。昨季は鳥谷が不振に陥ることもしばしばあったが、それでもショート・鳥谷の聖域化、フルイニングしばりが崩れることはなかった。この調子では北條のみならず他の内野手の誰もが、1イニングたりとも1軍のショートを経験できない。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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