僕が箱根でなく米国留学を選んだ理由 19歳・スピードランナーの挑戦
甘くはなかった米国への道
語学力については、文武両道を貫いた岡田の努力のたまものだ。國學院久我山高は駅伝の強豪であると同時に、都内屈指の進学校でもある。かねてより「将来的なことを考えると、陸上一筋というよりはいろいろな可能性を持たないと」と考えていた岡田は、部活動と同様に勉強にも力を入れており、得意の英語は模試で偏差値70近くを取っていた。
部活動と勉強の両立に苦労するも、「留学したい」という覚悟は揺るがなかった 【スポーツナビ】
まったく異なる米国の練習
また、日本より個人の成長があってのチームという発想が強いと感じている。「チームのために一緒になって走ろうというよりは、俺が勝ちたいからいく」という雰囲気を、岡田も気に入っているという。さらに、1500メートルを3分39秒(ちなみに日本記録は3分37秒42)で走る先輩がいるなど仲間のレベルも高い。ただひとりのアジア人である岡田にも皆気さくに接してくれ、恵まれた環境での切磋琢磨(せっさたくま)に気持ちを奮い立たせているようだ。
ただ渡米してすぐは、陸上よりもとにかく授業についていくのが精いっぱい。慣れない英語でのレクチャーに加えて課題も多く、1週間で400ページほどある文献を読むこともあった。当時を振り返ると「単位どころか、この授業を最後までやり切れるのかというような状態だった」と苦笑い。しかし、無事に最初の1学期をやり切り、「陸上にかかわらず、米国のわりとレベルの高い大学で半年過ごせたことで、少し自信がついたなというのはすごく感じます」と、意識が少しずつ変わってきた。
日本の陸上仲間には、自身と同じようにこれまでとは違った方法で強くなることに興味を持つ人も多いとは岡田の弁。いずれ先駆者と呼ばれるかもしれない、と尋ねるとこんな答えが返ってきた。
「一番恐れているのは、もし僕が全然成功しなくて、『やっぱり日本人には米国の練習は合っていないんだ』と結論づけられること。そうすると今後さらなる発展はない。成功してこそ初めて自分の言葉に説得力が出てくると思うので、とにかく結果ですね」
今後は米国の大学トップレベルを目指しながら、1500メートルの日本記録更新をターゲットにしていくという。
野心あふれる19歳の挑戦はまだ始まったばかり。目先の結果ではなく長い目で見守ることこそ、後に続くであろう未来のメダリストたちの道を切り開くことに続くのではないだろうか。
(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)