内山高志――最強のボクサーになるために 海外挑戦、統一王者、防衛記録を語る

杉浦大介

三浦に勝ったバルガスとも戦ってみたい

三浦を倒したバルガスとも対戦をしてみたいと話す内山 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

――アメリカの熱心なファンの間で内山選手の進出が待望されているのは、ただ強いだけでなく、面白い試合、豪快な試合ができるからで、ラブコールの背景にはそういった根拠があります。内山選手本人はいつもお客さんを喜ばせたいと意識しているんでしょうか?

 練習の段階で意識しますよ。お客さんが喜ぶ試合というのは派手な試合じゃないですか。ドーンと当てて、ドーンと吹っ飛ばしてとか。強くなるための練習の中で、強いパンチを打って相手に当てるとか、相手を倒すこと、そういったものが含まれている。ただ、試合のときはとにかく勝つことだけを考えています。その中で、練習でやったことが自然と出れば良いかなという感じです。

――今年にアメリカ進出が具体化するとして、正直、もう少し早く行きたかったという想いはありますか?

 日本人でもラスベガスの舞台に立つ例が出てきたのは最近のことで、数年前はほとんど話はなかったですよね。欲を言えば、今、20代の選手たちが羨ましいというのはあります。昔より行き易い感じになっていますし、20代半ばくらいだったら、向こうで何試合かできる。僕は36歳なので、前座を何試合かこなしていくには遅いじゃないですか。そういう意味ではもう少し前にやれていればとも思います。ただ、これまで生きて来る中で、僕は運は良かった方だと考えています。今こういう話が出てきたということは、逆にこの時期が良かったのかなと。これからアメリカで名前を売って、数試合でもできれば良いですね。

――ウォータースに限らず、昨年11月に三浦隆司選手(帝拳)に勝ってWBC王者になったフランシスコ・バルガス(メキシコ)ともいずれ統一戦が具体化しても不思議はないですよね。

 やりたい気持ちは凄い強いです。やっぱり三浦を倒したという実績がある選手ですから。

――他にもWBA正規王者のハビエル・フォルツナ(ドミニカ共和国)であるとか、暫定タイトルを含めれば3階級を制したユーリオルキス・ガンボア(キューバ)、一階級下のWBO王者であるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)など、条件的に試合をまとめるのが不可能ではない選手が近い階級にそろっています。熱い試合ができそうだなと感じる相手は?

 やはりガンボア、ロマチェンコじゃないですか。アマチュアでもトップ、金メダリストだった選手たちで、実績では僕よりもはるかに上。そういった面で面白いし、実力もありますしね。やれば盛り上がるかなと思います。フォルツナも(内山が2012年に8ラウンドTKOで下したブライアン・)バスケス(コスタリカ)とやってチャンピオンになりましたけど、良い選手、まとまった選手。同じ中間距離タイプなので、やってみたいという気持ちはあります。

何年たっても名前が残るように

――真の意味での世界のリングが視界に入って来ていますが、内山選手は海外ボクサーで憧れの存在とかいたんですか?

 ボクシングを見るようになったのは高校、大学くらいなんですけど、そのときに好きだったのはオスカー・デラホーヤ(アメリカ)とか。ナジーム・ハメド(イギリス)も凄い好きだったですし。あとはアイク・クォーティ(ガーナ)とか、フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)とかも好きでしたね。

――本格派の内山選手が、変則ファイターのハメドのファンとは少し意外ですね。

 高校生のときにあの破天荒な動きに憧れたことがありました。僕とスタイルは全然違いますけどね。

――スター選手たちが活躍するのはラスベガスだけではないのですが、日本のファンはアメリカのボクシングというとベガスという舞台を思い浮かべます。内山選手もベガスに対する憧れのような想いはありますか。

 憧れというより、強いと言われている選手たちがいて、なおかつ熱狂的なファンに見守られている場所でやりたいということです。最近はマカオだってお客さんがたくさん入って、ベガスみたいにやるわけじゃないですか。そこでも全然良いですし。日本の地方の新人王が後楽園ホールのリングに立ちたいと願うのに似ていると思います。僕もずっとWOWOWでラスベガスの試合とか見ているんで、やってみたいという気持ちは強いです。

――アメリカ進出が実現せぬまま引退することになったとしたら、後悔すると思いますか?

 何かしらの理由があって、決まらなかったらそれは仕方ないわけじゃないですか。何かの条件で決まるに至らないのであればしょうがない。ただ、できるのにできなかったら後悔は残りますね。

――後世の人たちに内山高志というボクサーをどう記憶してもらいたいですか?

 現時点ではまだ現役中なので、答えるのは難しいし、そこまで考えてないです。ただ、やっぱり何年たっても名前が残るようにはなりたい。「誰が最も強かったのか」「日本人で誰が一番か」という話になったとき、「内山じゃないか」と言われるように。いつまでも名前が挙がるような選手になりたいです。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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