乳がんと闘う女子レスラー亜利弥’の挑戦 「好きなことがあれば胸いっぱいできる」
痛みに耐え歓喜の勝利
ストリートファイト有刺鉄線ボードデスマッチでデスマッチ初体験となった 【田栗かおる】
当初、亜利弥’は田中、菊タローと組み、大仁田&ダンプ松本&ミス・モンゴルと対戦する予定だった。ところが、全選手入場後、「大仁田さんとタッグを組みたい」との亜利弥’のアピールにより、急きょ、大仁田と菊タロー(この日はKIKUZAWAとして戦う)が入れ替わる形となった。
いざ、試合となれば、対戦相手も容赦はしない。亜利弥’はダンプから竹刀でたたかれ、有刺鉄線ボードにたたきつけられるなど、非情な攻撃を受けた。しかし、初タッグとなった大仁田との連係プレーも冴え渡り、最後は大仁田とのダブル・ブレーンバスターでKIKUZAWAを投げると、亜利弥’がカバーして3カウントを奪い歓喜の勝利を飾った。
北斗晶さんから激励「本当の敵をたたきのめして」
北斗晶さん、ジャガー横田、大仁田さんからも激励のメッセージを受ける 【田栗かおる】
師匠のジャガー横田からは、「お祝いに来てほしい」と、4.3新木場で開催される「Jd’生誕20周年〜同窓会だよ全員集合!!〜」への参戦オファーを受けた。
さらに、同じ乳がんを患い、15年9月に右乳房全摘出手術を受けた北斗晶さんから、堀田祐美子に手紙が託され、「やられても立ち上がるのがプロレスラー。そんな亜利弥’選手を見せてください。リング上では対戦相手が敵だけど、本当の敵であるがんをたたきのめしてください」と激励のメッセージが寄せられた。
タッグを組んだ大仁田は「いろんな会場で、1枚1枚チケットを売っていた亜利弥’の姿を見ました。もう1回、2回、3回と絶対にリングに戻ってきてほしい」とエールを送ると、「絶対に、このリングに帰ってきます。そのときまで覚えておいてください」と絶叫して、亜利弥’はリングを下りた。
控え室に戻っても興奮が冷めやらない亜利弥’は「マーくん(田中)がいなかったら、こんな大会できなかった。マーくん、大仁田さんに感謝します。お祭り気分で盛り上がってうれしい。がんも絶対倒したい。竹刀がこんなに痛いものかと思ったけど、がんでつらいことがあったら、この痛みを思い出してがんばります」とコメントした。
体中をがんから来る痛みに襲われている亜利弥’だが、引退する気持ちはない。「1年後、2年後にまた試合ができたらいい」と、ネバーギブアップの精神でがんと闘っていく覚悟だ。
元フットサル選手の久光重貴さんの影響
プロレスに限らず多くの格闘技にも挑戦してきた亜利弥’。最後まであきらめず、1年後、2年後にも再びリングに上がるために 【田栗かおる】
そんな亜利弥’が、20周年記念試合で今度はデスマッチにチャンレンジしたのだから、彼女のプロレス・格闘技人生は濃密なものになったはずだ。
亜利弥’が同じアスリートとして、強い影響を受けたのが、肺がんと闘いながらプレーを続ける元日本代表フットサル選手の久光重貴さん(湘南ベルマーレ)の存在だ。
「久光さんのことを知らなかったら、プロレス界から、そのままフェイドアウトするか、引退していた。久光さんとはがんの罹患場所は違いますが、抗がん剤治療や新薬を試しながらのトレーニングに心を打たれました」(亜利弥’)
そして、亜利弥’は「ステージ4で病院から、絶対安静の指示が出ている人たちには、私がプロレスを続けることで、『好きなことがあれば、胸いっぱいできるんですよ』ということを伝えたい。偉そうなことは言えませんが、私の生きざまで元気になっていただけたり、何かを感じ取ってくださる方がいたら最高にうれしいです」と語った。
これからも、亜利弥’の挑戦はまだまだ続く。1年後、なんらかの形で、21周年を祝うリングに彼女が立っていることを願ってやまない。