“手探り”で切り開くアジア戦略 大宮アルディージャのユニークな試み
サッカー教室と「うちわプロジェクト」
「うちわプロジェクト」など現地でのサッカー教室だけではなく、新たな展開も出てきている 【写真提供:大宮アルディージャ】
今年は3月にインドネシアのジャカルタとバリで、そして11月にラオスとカンボジアでサッカー教室をやりました。去年に関しては、私のネットワークがある国で、JCBさんを連れて各地で開催したんですけれど、今年からはJCBさんの方から開催する国を選ばせてほしいというリクエストをいただきました。「自分たちのクレジットカードをPRしたい国でやりたい」ということで、その代わりにしっかりと予算を付けていただけました。それと今回はJCBさんだけでなく、Jリーグを通じて国際交流基金からも支援をいただいています。
実は20年の東京五輪に向けて、Jリーグと国際交流基金がタッグを組んで、アジアに対しての活動を始めているんですね。具体的には、五輪が開催される頃にU−23になっている年代を対象としたクリニック。その候補にラオスが挙がったときに「ラオスだったら、Jクラブの中では大宮が最初に進出している」ということで、われわれにお声がかかって、国際交流基金ともつながることができました。
ラオスに関してはもうひとつ面白い話があって、JICA(国際協力機構)の「うちわプロジェクト」に協力させていただきました。私も知らなかったのですが、日本のうちわの90%が香川県で作られているんですね。一方、ラオスではうちわ作りに適した竹が採れる。そこでJICAを通じて、香川のうちわ作りの技術をラオスに伝えて、ラオスで作られたうちわをJリーグのグッズとして商品化して日本で販売すると。日本の技術を伝えてお金を稼げるようにするというのは、それこそJICAがやりたいことだし、Jリーグとしても国際交流とビジネスの面で非常に良い話ですよね。ですから現地でのサッカー教室だけでなく、そういった新たな展開というものも最近は出てきました。
“バカ代表”だからこそ、ここまで来ることができた
特に人には本当に恵まれましたね。大学のサッカー部の先輩・後輩もそうですし、JCBさんもそうですし、Jリーグや国際交流基金やJICAの皆さん、そしてメディアの皆さんもそうです。気がついたら、そういった人たちを巻き込みながら、アジアでの活動が広がっていきましたし、ラオスの首相にも2年続けてお会いすることができました。トップチームの現場しか知らなかった自分が、サッカーを通じて各国の要人や大使の方々とお会いできるなんて、2年前にはまったく想像できませんでしたね(苦笑)。
おかげさまでこの2年間の活動で、大宮とアジアの国々とのパイプはできました。昨年10月にスタートしたサッカー教室も、ラオス、タイ、インドネシア、そしてカンボジアと続けてきて、昨日(11月15日)までで1000人を超えました。現場ではそれなりに苦労もありましたが、現地の子供たちの笑顔を見ると、やっぱり新たなモチベーションが湧きます。今後の課題としては、ここまで構築してきたものをクラブとしてどう発展させていくか、ということ。先ほどもお話しましたように、クラブとしてアジア戦略はまだスタートしたばかり、手探りの段階です。とはいえ、大宮がJ1に復帰することになりましたので、今後はアジア戦略にも弾みがつくと思います。
私自身が考えるアジア戦略の今後ですが、大宮というクラブが、アジアでも世界でも通用するようなクラブとなるための一助になるような活動のひとつになればと思っています。そして、日本の人口がこれからどんどん減少していく一方で、人口増加による経済発展が見込まれるアジアにおいて、日本人が活躍できる場を作っていきたい。この活動を通じて、そこまで広げられればいいなと個人的には考えています。