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高校駅伝アベックV世羅、強さの秘密
好循環を生む“目標”の存在

世羅高・女子を変えた男子の存在

全国入賞すらなかった世羅高・女子。それでも身近にいる男子チームの存在により、意識が少しずつ変わっていった
全国入賞すらなかった世羅高・女子。それでも身近にいる男子チームの存在により、意識が少しずつ変わっていった【写真は共同】

 最速と最多を手に入れた世羅高の男子に火をつけたのは、世羅高の女子だった。1区・小吉川志乃舞(3年)が区間賞で発進し、途中順位を下げたものの、アンカー5区の向井優香(2年)が先頭との35秒差をひっくり返して、うれしい初優勝。インタビューのお立ち台の上で、向井は「世羅は男子だけじゃない」と感激をかみ締めた。


 世羅高でいつも話題になるのは男子。全国制覇して世羅町をパレードするときも、女子は目立たないように最後尾をついていくだけ。羨望、憧れ。距離や設定タイムは違うけれど、練習内容は全国優勝を目標にしている男子と同じ。私たちにもできるはず。女子チームの意識が少しずつ変わっていった。


 全国入賞すらなかった女子チームは、男子チームと何が違うのかを話し合い、目標の差だと気づく。「1位か、8位か。目標の差は大きい」(長尾)。夏を越え、駅伝シーズンを迎えるころ、女子も全国優勝が目標だと口にするようになった。

世羅高の天下はいつまで続く?

 そんなチームをインターハイ3000メートル3位の向井と同4位の小吉川が引っ張った。1区の小吉川は「区間賞でチームに貢献したい」と有言実行。2区の1年生、大西響は広島県大会も中国大会も走っていないが、物怖じしない性格を買われて抜擢(ばってき)。先頭と2秒差で3区・長尾明日香(3年)につないだ。


 長尾は残り1キロまでにリードを広げられたが、前回も3区を走っている経験から「勝負は最後の上り坂」と冷静だった。ギアを変え、先頭の西脇工高(兵庫)に再接近。逆転はできなかったが、駅伝のお手本のような力走だった。4区では後退し、4位で5区・向井へ。岩本監督は「30秒差なら逆転可能」と見ていたが、実際は35秒差。希望を持って、見守るしかなかった。


 その向井。「とにかく優勝をあきらめずに走りました」と飛ばした。2連覇を狙う大阪薫英女高(大阪)、西脇工高をかわし、3.7キロ付近で先頭の常磐高(群馬)も捕まえた。そしてまぶしく輝くフィニッシュへ。「夢みたい」と笑顔の向井は、5区を日本人歴代トップとなる15分26秒で駆け抜けゴールテープを切った。


 走った仲間、サポートしてくれた仲間に「ありがとう、ありがとう」と声をかけて回った小吉川は「世羅に女子の時代も来るかなと、来年も楽しみにしています」。連覇が懸かるたすきが、向井たち後輩につながった。


 劇的な男女アベック優勝を果たし、世羅高が高校駅伝のレジェンドになった今大会。男子の区間賞こそ3年生が独占したが、2年生にも世羅高の吉田、学法石川高の遠藤ら5000メートル13分台の好ランナーが多い。女子でも1区で小吉川と同タイムだった田中希実(西脇工1年)ら、下級生が随所で好走を見せた。誰が次のヒーロー、ヒロインになるのだろうか。

中尾義理

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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