世界王者12人――イギリス・ボクシング界の隆盛
アメリカやメキシコを押さえてトップの王者数
もともとイギリスは近代ボクシング発祥の地ということもあり、流れさえくればブームに乗りやすいという点では他国よりも優位にあるのかもしれない。その火付け役はWBA、IBF世界スーパー・ミドル級王者のカール・フロッチだったといっていいだろう。
「コブラ」のニックネームを持つフロッチは、13年11月に同胞のジョージ・グローブスを相手にスリリングな逆転TKO勝ちを収めて王座を防衛。翌年5月にはウェンブリー・スタジアムで再戦が行われた。チケットは飛ぶように売れ、会場は8万人近い大観衆で埋まった。ここでフロッチはまたしてもファンを熱狂させる8回TKOでグローブスを沈めてみせた。
これを機にイギリスのボクシング人気は沸騰。イギリス出身でアイルランド国籍を持つアンディ・リーを含め、現在は以下のとおり12人の世界王者を擁するまでになった。2年前が5人だったことを考えると、現在の勢いが分かるだろう。
WBAバンタム級:ジェイミー・マクドネル
IBFバンタム級:リー・ハスキンス
WBAスーパー・バンタム級:スコット・クイッグ
IBFスーパー・バンタム級:カール・フランプトン
IBFフェザー級:リー・セルビー
WBAライト級:アンソニー・クロラ
WBOライト級:テリー・フラナガン
IBFウェルター級:ケル・ブルック
WBOスーパー・ウェルター級:リアム・スミス
WBOミドル級:アンディ・リー
IBFスーパー・ミドル級・ジェームス・デゲイル
WBA、IBF、WBO3団体統一ヘビー級:タイソン・フューリー
さらに次世代のスター候補も目白押し
興味深いのは、プロモーターたちが積極的に国内のライバル対決を実現させている点である。12月19日にはリーが五輪出場の実績を持つビリー・ジョー・サンダースを相手にマンチェスターで防衛戦を行うことになっており、来年2月13日にはフラナガンが前WBA暫定世界ライト級王者のデリー・マシューズをリバプールで迎え撃つ。さらに2月27日にはフランプトン対クイッグの世界王者対決がマンチェスターで実現する。ブルック対カーンのマッチメークも期待されている。
こうしたイベントが歓迎され成功する裏には、イギリス特有の地域意識がある。イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという4つの地域で構成されており、それぞれの対抗意識が強い。北アイルランドを拠点にするフランプトンとイングランド出身のクイッグの組み合わせなどは、その典型例といえよう。また、マクドネルやセルビー、ブルック、デゲイルらを擁するマッチルーム・スポーツのエディ・ハーン・プロモーターと、フラナガンやスミスと契約しているフランク・ウォーレン・プロモーターの競争意識もプラス効果をもたらしているようだ。
タレントも豊富なイギリスのボクシング人気は、まだしばらく続きそうだ。
Written by ボクシングライター原功
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