データで勝利を呼び込む湘南ベルマーレ J1残留で曹監督が得た手ごたえ
得点パターンについて
曹監督は、ボールを奪う位置のデータを眺めながら「ここが一番の課題」と話す 【スポーツナビ】
【スポーツナビ】
(遅攻のゴールが少ないことは)上げていかないといけないですよ、絶対に。ただ、これが上がっていれば、うちは3位以内に入っていますから。ここが一番の課題ですね」
守備のデータについて
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「もちろん、空中戦も強い方がいいですけれど、ヘディングが強くて、スピードあって、ビルドアップできる選手が11人いたら、今ごろは優勝している。何のメリット、デメリットがあるのかを考えて、ゲームを作るのが監督の仕事なので、どれも平均的にしたら何の特徴もないチームになる。だから、何でもかんでもデータを競う試合じゃダメ。勝つためにデータを使うわけなので、必要のないデータは一切見せない。(空中戦のデータなどは)選手に一回も言ったことがないです。
われわれにとってネガティブなのは、ファーストディフェンダーが行けないこと。後ろにスペースがあるというのは、ラインが上がっているので、全然ネガティブではない。だから、今年のタックルラインは自陣ゴールから39.5メートルだけれど、これを43〜44メートルくらいにするのがベストだと思います。いまだ発展途上ですね」
空中戦は確かに苦手だが、湘南がやるべきことをやれば、それを相手に突かれるシーンは少なくて済む。だから空中戦のデータを、曹監督が用いる必要はない。理にかなっている。
“裏付け”としてのデータ活用
「データから先に入った分析って、あまり信ぴょう性がなくて、どうとでも受け取れる。そうではなくて、自分たちのスタイルや実際の試合から出発して、データを裏付けさせる方が、使えることが多いなと最近思います。その前提を抑えた上で、データと付き合いたいなと、僕は思っています」
それが湘南にとって、良いデータなのか、あるいは無視しても構わないデータなのか。
データはあらゆる優劣を明らかにするが、善悪を判断することはできない。
ここで考えたいのは、湘南には明確なスタイルがあること。寄るべき正解があるからこそ、曹監督はデータに振り回されず、スプリント数やペナルティーエリア侵入回数など、チームにとって必要なデータだけを有効に活用できている。
湘南ベルマーレとデータは、まさに理想の関係である。インタビューを終えた筆者は、そう結論付けた。
将来的に求めるデータ
湘南にとって、良いデータなのか、あるいは無視しても構わないデータなのか。曹監督は常にデータと向き合いながらチーム強化を行っている 【写真:アフロスポーツ】
「僕が今、興味あるのは、その得点がボールを奪ってから、前方に行ったのか、後ろに下がったのか。何秒以内とか、何本のパスというデータは出ているけれど、奪った後にボールを一度後ろに下げてから前へ行く方が得点は決まるのか、そのままパパッと前にだけ行く方がいいのか。マニアックなことを知りたいです。
例えば、CKが5回あったら、何本目のCKでいちばん得点が生まれるのか。FKだったら、何番目のFKでいちばん失点するのか。僕の感じでは、CKは1本目が高いんじゃないかなと。相手がやり方を分かっていないのもあるけれど、あんな端からクロスが上がってくるCKって、サッカーにあまりないシチュエーションだから。その目線の違いで、CKは1本目に何か仕掛けた方が入りやすいんじゃないか、とか」
他にも、サインプレーは1本目にやるのかいいのか、いつ仕掛けるべきか。大量のデータから統計をとれば、采配を高めるセオリーが発見できるかもしれない。
「まあ、そんなにデータだけでくくるものじゃないけれど、何となくそういうのは知っていたいなというのはありますね」
曹監督のサッカーに対する好奇心は、とどまるところを知らない。
(文:清水英斗)