日本代表、攻撃を再整備してサモア戦へ 防御に工夫のスコットランドに完敗

斉藤健仁

シェイプの連動が見られず、防御しやすい形に

前半にモールからトライを奪ったが、後半はノートライに抑えられた 【Photo by Yuka SHIGA】

 前半は結局、ジョーンズHCの想定していた通りの展開にならず7対12で折り返す。さらに、後半5分、10対12と2点差になったが、再三、突破役として機能していたマフィがケガで交代してしまい、相手陣22m内で、個の力でディフェンスラインをブレイクできる選手はいなくなってしまった。そこで、劣勢を日本代表は細かくパスをつないで打破しようとする。

 ただ、日本代表が採用する「アタック・シェイプ」では、9番を起点とした「9シェイプ」と10番を起点とした「10シェイプ」をリンケージ(連動)させて、動かすことが生命線。ただ、この試合ではリンケージをほとんど見ることはできなかったのは残念でならない。ただパスを細かく回すだけになってしまうと、相手のディフェンスは守りやすくなってしまう。

 10対24で迎えた後半24分、CTB田村優(NEC)からCTBマレ・サウ(ヤマハ発動機)へのパスが、WTBトミー・シーモアにインターセプトされた場面は、その象徴的なシーンとなった。確かに、パスがつながっていればトライだったかもしれない。だが、結局、そのままトライされて10対31。3トライ3G差となり、ほぼ勝負はついてしまった。

 結局、スコットランド代表は後半だけで5トライ挙げて、4トライ以上のボーナスポイントを獲得した。日本代表にとっては、まるで、昨年11月のマオリ・オールブラックス(ABs)の初戦で、21対61で負けた試合を彷彿させるかのようだった。

「チームは生き物なので、良い時もあれば、悪い時もある」

試合終了後にスコットランド代表と健闘をたたえ合う 【斉藤健仁】

 やはり、ラグビー界世紀の大金星から中3日の試合で、「疲れはない」と言うものの、メンタル、フィジカルの部分で影響はなかったことはないはずだ。また、ジョーンズHCの立てた戦略に対して、リーダー陣が冷静にゲームをコントロールし、試合中に戦術・戦略を自ら変更するほどの余裕もなかった。

 前半の最後にビッグタックルを決めたFB五郎丸は「あのような点差ほどの実力差ではないと思っています。疲れではなく、戦術や修正能力あたり(の差)が出たと思います。チームは生き物なので、良い時もあれば、悪い時もあります。この波を小さくすることがティア1(ラグビー上位10カ国)に入る近道かな」と振り返った。そして、10月3日のサモア代表戦に向けては「マオリABs1戦目と2戦目ではまったく違ったチームなりましたし、能力を秘めている選手がたくさんいるので、ジョーンズHCの立てた戦術に向けて、一人ひとりやっていきたい」と前を向いた。

サモア戦に向けて「勝つことだけに集中」

次戦は10月3日のサモア代表戦となる 【斉藤健仁】

 ジョーンズHCも「(日本代表は)良いアタッキングチームです。ただスコットランド戦では状況判断やスキルのエラーでそれが発揮できなかった。また、遂行力や戦術の継続という点でも一貫性がなかった。もっとシャープにしないといけない」と反省しつつも、サモア戦に向けて「今回は前回と異なり、10日間の準備期間があります。勝つことだけに集中します」と語気を強めた。

 2019年の自国開催のワールドカップに向けて「日本ラグビーの歴史を変える」ことを旗印に始動したエディー・ジャパン。1勝だけでなく、2勝、そして決勝トーナメントに進出するためには、3戦目のサモア代表に勝利することは必須。再び、日本代表の強い姿を見られるはずだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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