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偶然ではなかったラグビー史に残る奇跡
エディージャパンの物語は続く

世界ランク3位の南アフリカに勝利

日本代表が起こしたジャイアントキリングにスタジアムは熱狂した
日本代表が起こしたジャイアントキリングにスタジアムは熱狂した【斉藤健仁】

 歴史が動いた、大金星、ジャイアントキリング、奇跡――ただ、それはラッキーでもなく、偶然でもなく、自らたぐり寄せたものだった。


 9月19日、イングランド・ブライトンでラグビー日本代表はワールドカップの初戦、南アフリカ戦を迎えた。優勝2回、世界ランキング3位のフィジカルチーム「スプリングボクス」に、日本代表がテストマッチ史上初めて挑んだ。


 約3万人で満員だったスタジアムに何度も「ジャパン」コールがこだまする。シーソーゲームとなった試合は、29対32からPGを決めれば同点という状況で相手が反則しても、日本代表はスクラムを選択。果敢にボールを継続、後半ロスタイムにCTB立川理道(クボタ)、No.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)とボールが渡り、最後はWTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)がタックルを受けながらも左隅に飛び込み、34対32と逆転、そのままノーサイドを迎えた。


 日本代表がワールドカップで24年ぶり2勝目を挙げた瞬間だった。

ジョーンズHCが重視してきた選手の自主性

攻守に奮闘し、自信を持って重要な判断を下したリーチ マイケル主将
攻守に奮闘し、自信を持って重要な判断を下したリーチ マイケル主将【Photo by Yuka SHIGA】

 2012年から日本代表を率いるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)も試合後、興奮してこう述べた。「フィットネスで相手を上回ればチャンスがあると思っていた。それが60分くらいまではできていた。最後の20分も同じようにできました。最後はPGで引き分けに持ち込むことで満足せず、トライを取りに行ったことが素晴らしかった」


 指揮官の選択は「PGで引き分け」だったが、FLリーチ マイケル主将(東芝)は勝ちにいった。「朝、PGの選択についてエディーと話していて、思うようにやればいいと言われたのでそうしました。相手が(シンビンで)一人少ないのと、勝ちに行く気持ちがあった」。80分間、接点で仕事をし続け、タックル回数はチームトップの16回を誇る仕事人は振り返った。またジョーンズHCが、春からリーダーグループを中心に選手たちの自主性を重んじてきたことが結果となって表れた瞬間だった。

勝因となった2人がかりのタックル

1人目が低く、2人目が上半身にタックルし、南アフリカを苦しめた
1人目が低く、2人目が上半身にタックルし、南アフリカを苦しめた【Photo by Yuka SHIGA】

 自ら「戦術コーチ」と名乗るジョーンズHCのラグビーも緻密だったと言えよう。「ボールインプレー」を増やして相手を疲れさせること、攻守にわたって「先手を取る」ことがこの試合の勝つためのキーワードだった。


 MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた、日本で初のスーパーラグビープレイヤーのSH田中史朗(パナソニック)は「最大の勝因は?」と聞かれて、「やっぱりディフェンスですね」と胸を張った。


 世界で一番と言える大きなFWに、タックルミスで2トライを献上したものの、その言葉の通り、FWは相手の9番を起点とした「アタック・シェイプ」に一人目は低いチョップタックル、2人目は上半身にタックルをしてプレッシャーを与え続けた。相手がそれを嫌がり、規律が乱れたことで、PGのチャンスを得た。FB五郎丸歩(ヤマハ発動機)が6本中5本のPGを成功させたことにつながった。


 タックルしてすぐに起き上がってディフェンスをセットするというリアクション、チームでは「リロード」と呼ばれる意識も高かった。「ワールドカップということでタックルして、すぐに立ってということができていた」(HO堀江翔太/パナソニック) 「アタックもそうでしたがディフェンスでも(すぐに立って)15人でプレーすることができていた」(SO小野晃征/サントリー)


 また「緊張しましたが、スーパーラグビーの決勝のような雰囲気だった」というSH田中が称えるのがBK陣のディフェンスの判断だった。相手が外で余っているときはWTB山田章仁(パナソニック)が前に上がってタックルし、外へのパスを遮断したシーンもあった。「今日の試合はコミュニケーションが取れていた。なかなか練習ではできていなかったですが、BKがディフェンスで全員良い判断ができていた。相手よりも良いディフェンスができた」と納得の表情を見せた。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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