偶然ではなかったラグビー史に残る奇跡 エディージャパンの物語は続く
南アフリカの弱点を突いたアタック
試合前の練習を終え、仲間の肩に手を置いてロッカールームに戻る日本代表 【斉藤健仁】
「一発、相手の10番(ランビー)にハル(立川)を当てたとき、ゲインラインが切れたので、もっとやろうと思いました。ハルのボールキャリアとしての勢いと姿勢が良かった」と小野が言えば、立川も「本来はもっと外側に振りたかったが、パスカットにはまらないように、ディヴィリアスの内側でゲインラインを切れるようにランをした」と冷静に振り返った。
実は、立川のランがSOの近場で機能したことが、後半28分のFB五郎丸のトライを生む。ラインアウトからCTB立川がランをしたが、「何回もランをしていたので、ディヴィリアスが(タックルに備えて)止まってくれたので、うまくパスができた」。その裏をSO小野が走り、立川からパスを受け取り、小野がその内側に走り込んできたWTB松島幸太朗(サントリー)にパス。松島は相手のギャップにきれいに走り込んでラインブレイクし、最後はFB五郎丸へパスした、というわけだ。「練習では7割くらいの出来のサインプレーでしたが完璧でしたね! BKでトライが取れましたが、ラインアウトをFWが取ってくれたので全員のトライですね」(小野)
随所に見られた「賢いプレー」
試合後にエディー・ジョーンズHC(手前)と抱き合うリーチ マイケル主将 【斉藤健仁】
春から指揮官は、この日をターゲットに、分析し、練習メニューを組み立てて選手たちに落とし込んでいた。選手たちは見事に選手はその期待に応えてワールドカップという大舞台で実行して見せた。イングランドに来てから「日本もラグビーができる国で、リスペクトを受けたい」とジョーンズHCは繰り返していたが、コーチと選手が一丸となって勝利という最高の形で、それを証明して見せた。
「日本ラグビーの歴史はまだ完全に変わっていない」
五郎丸(左)らが観客の声援に応える 【斉藤健仁】
「最初から決まっていたスケジュールで、それに向けてコンディションも調整、トレーニングをしてきました。それに、日本は高校や大学で連日試合をするとも通常なので、3日も空いていれば休養は十分です。良いリズムです。1週間後だったら、かえって調子が狂ってしまうかもしれません(苦笑)。今日は『ベストラグビーの国』に勝利したのですから、余韻に少し浸りますが、明日からは残りの3試合に集中します」
選手もそれは十分に承知しており、リーチ主将は「もちろんうれしいけど、残り試合もある。切り替えてスコットランド代表戦に向けて良い準備をしないといけない」と次戦に向けて気持ちを切り替えてきた。
ジョーンズHCは最後に言い切った。「日本のラグビーの歴史はまだ完全に変わっていない。準々決勝に進まなければ、この勝利が無駄になってしまう」
確かに、日本ラグビーだけでなく、世界のラグビー歴史を変えた。だが物語は終わっていない。エディー・ジャパンの英雄譚はまだ始まったばかりだ。