マインツで評価される武藤のポテンシャル 岡崎の足跡をたどり、さらなる飛躍を

岡崎との共通点は守備面でのプレー

シュミット監督は武藤の中に岡崎(写真)との共通点を見いだしていた 【写真:フォトレイド/アフロ】

 開幕節のインゴルシュタット戦(0−1)に続く第2節で、武藤は初の先発を果たすことになる。昨シーズン3位のボルシア・メンヘングラードバッハ相手に、このストライカーは自身が戦えることを証明し、遂行した仕事はマルティン・シュミット監督に満足以上の手応えを与えるものだった。たとえゴールはなかったとしても、納得させるだけの出来だったのだ。試合後、指揮官は「プレーの特徴は、少しシンジ(岡崎)に似ていたね」とも話していた。

 この意見にはボネンゲルも同意する。「守備面のプレーで2人は似ているね。とても力強いし、ハードワークする。それに予測も良いね」。また武藤を起用したことで、ポゼッションにおいても危ない場面は見られなかった。確かにボルシアMG戦では、2つの大きなチャンスをものにしそこねた。そのため2−1という最少得点差で終わったわけだが、悲劇的と言うほどの内容ではなかった。

 マインツは、岡崎退団によって生じたギャップを埋めるべく、2人のアタッカーを獲得していた。今季のシュミット監督には他の選択肢もある。フロリアン・ニーダーレヒナーは猛牛のようなアタッカーで、まさにペナルティーエリアの中で真価を発揮する仕事師だ。フィジカルが強くボックス周辺でボールを供給できるセンターFWが必要ならば、指揮官はコロンビア人のジョン・コルドバを起用できる。

武藤ファンの元ドルトムント選手

武藤の資質はドイツに合うと、専門家も見ている 【Bongarts/Getty Images】

 では、武藤の役割は何なのか? 彼の持ち味である、あの解き放たれた矢のごときスピードの破壊的なラン、また高い技術での攻守にわたる貢献はチームにとって大きなものとなる。それにユーティリティー性もある。何しろ中央で起用されたのはドイツに来てからで、東京ではウィンガーとしてプレーしていたというのだから。

「岡崎と武藤はどうも似ている気がしてならないんだ」とボネンゲルは言う。岡崎の方がより猪突(ちょとつ)猛進なイメージがあったが、技術や戦術理解度という点において両者は似ていると同記者は話す。

 ドルトムントなどブンデスリーガの舞台でプレーしたパトリック・オヴォモイエラも、武藤のファンの一人である。「面白かったよ。彼を見るのは楽しいね」。ハノーファー戦後、ブンデスリーガの公式サイトに彼はそうコメントを残している。

 この元プロ選手であるブンデスリーガのエキスパートは、武藤の資質がドイツに合うものであるとみている。

「アジア人はブンデスリーガのプレースタイルに本当に合うね。技術面やフィジカル面、そして意思の強さというものがドイツに合うという場面を僕らは何度も目にしてきた」

ポテンシャルは十分にある

ポテンシャルはある。そして成長するための時間もマインツでは用意されている。ブンデスリーガでどこまで飛躍できるか 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 そんな話はマインツにとって目新しいことではない。「アジア人、特に日本人のメンタリティーにこのクラブは本当に感謝している」。規律と人間性という要素がクラブの哲学に合うのだと、ボネンゲルは語る。

「武藤はチームの中で外国人という感じがしない。英語も話せるおかげでコミュニケーションも容易になっている。加えて日本人はオープンでフレンドリーで、いつもファンと話をしたり写真を撮ったり、サインをする意思がある。武藤とマインツの波長が合うのは間違いない。この若者が岡崎の足跡をたどるのは間違いないね」

 商業的な側面もあったのかもしれないが、そのクオリティーが本物であるからこそ、マインツのみならずチェルシーも獲得に興味を示したのだろう。「世界有数のクラブであるチェルシーで、すぐにやっていくのは大変だと思った」と武藤は語っている。純粋にスポーツ面のことを考えてドイツにやって来た武藤には、手本とする選手がいる。「バルセロナでのルイス・スアレスのプレーですね。彼のゴールを奪う本能には、強い印象を受けます」。

 だが、さらに大きな夢を見る前に、武藤はブンデスリーガで自分を印象づけなければならない。そのポテンシャルは十分にある。岡崎もそうして異国へと旅立っていった。

 日本代表での背番号14と、マインツで背負うナンバー9。足すとシンジがマインツでまとった背番号23になるというのもまた象徴的ではないか。繰り返す。武藤にはポテンシャルがある。そして成長するための時間も、ここマインツでは十分に用意されている。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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