マインツで評価される武藤のポテンシャル 岡崎の足跡をたどり、さらなる飛躍を
岡崎との共通点は守備面でのプレー
この意見にはボネンゲルも同意する。「守備面のプレーで2人は似ているね。とても力強いし、ハードワークする。それに予測も良いね」。また武藤を起用したことで、ポゼッションにおいても危ない場面は見られなかった。確かにボルシアMG戦では、2つの大きなチャンスをものにしそこねた。そのため2−1という最少得点差で終わったわけだが、悲劇的と言うほどの内容ではなかった。
マインツは、岡崎退団によって生じたギャップを埋めるべく、2人のアタッカーを獲得していた。今季のシュミット監督には他の選択肢もある。フロリアン・ニーダーレヒナーは猛牛のようなアタッカーで、まさにペナルティーエリアの中で真価を発揮する仕事師だ。フィジカルが強くボックス周辺でボールを供給できるセンターFWが必要ならば、指揮官はコロンビア人のジョン・コルドバを起用できる。
武藤ファンの元ドルトムント選手
「岡崎と武藤はどうも似ている気がしてならないんだ」とボネンゲルは言う。岡崎の方がより猪突(ちょとつ)猛進なイメージがあったが、技術や戦術理解度という点において両者は似ていると同記者は話す。
ドルトムントなどブンデスリーガの舞台でプレーしたパトリック・オヴォモイエラも、武藤のファンの一人である。「面白かったよ。彼を見るのは楽しいね」。ハノーファー戦後、ブンデスリーガの公式サイトに彼はそうコメントを残している。
この元プロ選手であるブンデスリーガのエキスパートは、武藤の資質がドイツに合うものであるとみている。
「アジア人はブンデスリーガのプレースタイルに本当に合うね。技術面やフィジカル面、そして意思の強さというものがドイツに合うという場面を僕らは何度も目にしてきた」
ポテンシャルは十分にある
「武藤はチームの中で外国人という感じがしない。英語も話せるおかげでコミュニケーションも容易になっている。加えて日本人はオープンでフレンドリーで、いつもファンと話をしたり写真を撮ったり、サインをする意思がある。武藤とマインツの波長が合うのは間違いない。この若者が岡崎の足跡をたどるのは間違いないね」
商業的な側面もあったのかもしれないが、そのクオリティーが本物であるからこそ、マインツのみならずチェルシーも獲得に興味を示したのだろう。「世界有数のクラブであるチェルシーで、すぐにやっていくのは大変だと思った」と武藤は語っている。純粋にスポーツ面のことを考えてドイツにやって来た武藤には、手本とする選手がいる。「バルセロナでのルイス・スアレスのプレーですね。彼のゴールを奪う本能には、強い印象を受けます」。
だが、さらに大きな夢を見る前に、武藤はブンデスリーガで自分を印象づけなければならない。そのポテンシャルは十分にある。岡崎もそうして異国へと旅立っていった。
日本代表での背番号14と、マインツで背負うナンバー9。足すとシンジがマインツでまとった背番号23になるというのもまた象徴的ではないか。繰り返す。武藤にはポテンシャルがある。そして成長するための時間も、ここマインツでは十分に用意されている。
(翻訳:杉山孝)