V8王者・山中がバンタム級頂上決戦へ=9月のボクシング見どころ

船橋真二郎

亀田和がマクドネルと再戦

亀田和毅はWBA世界バンタム級“レギュラー”王者ジェイミー・マクドネルと今年5月以来の再戦に挑む 【写真は共同】

 6日(日本時間7日)の米国テキサス州コーパスクリスティでは前WBO世界バンタム級王者の亀田和毅(日本/31勝19KO1敗)がWBA世界バンタム級“レギュラー”王者のジェイミー・マクドネル(イギリス/26勝12KO2敗1分)に再び挑む。和毅がWBOのベルトを返上し、挑戦者として臨んだ今年5月の初戦は、和毅が3回にダウンを奪う上々の滑り出しながら後半にポイントを吐き出した形。ジャッジ全員が1ポイント差でマクドネルを支持する際どい内容だった。亀田陣営は試合直後から再戦を直訴し、早々に内定。ダイレクトリマッチが決まった。前戦に続いて地上波CBSで全米に生中継され、和毅にとっては絶好のアピールのチャンスでもある。

 再戦では初戦の教訓を生かしたほうがより優位に立つ。ダウンシーン以外は両者ともに山場を演出できず、明確にポイントをアピールできなかったというのが率直な印象。和毅としては持ち前のハンドスピードの速いパンチの中に、いかに効果的なダメージングブローを織り交ぜられるかがカギとなるだろう。和毅は6月下旬から渡米。契約する“強力代理人”アル・ヘイモン氏のアドバイスでトレーナー陣を一新し、現地でトレーニングを重ねた。初戦を踏まえても和毅が2本目のベルトを巻く可能性は高いと見るが、和毅のボクシングに何がプラスされ、何が修正されたのかも楽しみなところである。また、アンダーカードでは次兄の亀田大毅(日本/29勝18KO4敗)が1年9カ月ぶりの再起戦を行う予定になっている。

3階級制覇の井岡がフライ級V1戦

4月に悲願の3階級制覇を成し遂げたWBA世界フライ級王者・井岡一翔が同級10位のロベルト・ドミンゴ・ソーサ相手と初防衛戦 【写真は共同】

 4月に悲願の3階級制覇を成し遂げた井岡一翔(井岡/17勝10KO1敗)が27日、エディオンアリーナ大阪・第一競技場でWBA世界フライ級王座の初防衛戦を迎える。挑戦者で同級10位のロベルト・ドミンゴ・ソーサ(アルゼンチン/26勝14KO2敗1分)はオプション(興行権)を握る前王者のファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)陣営が抜てき。13年6月、ラスベガスでファン・カルロス・サンチェス(メキシコ)とIBFスーパーフライ級王座を争って以来、2度目の世界挑戦となる。突出した武器は見当たらないが、全体にまとまった右のボクサーファイター型。ここまでスーパーフライ級からバンタム級を主戦場にしてきたことはポイントのひとつになりそう。井岡としては序盤のうちに持ち前の距離感を駆使して、しっかりとペースを握り、中盤以降にチャンスをつくりたいところだろう。

高山vs.原のミニマム級新旧対決

ボクシング主要4団体の王者となったベテラン高山勝成が若手のホープ原隆二とのミニマム級新旧対決を行う 【写真は共同】

 27日の大阪はダブル世界戦。IBF世界ミニマム級王者の高山勝成(仲里/29勝11KO7敗)の2度目の防衛戦も行われる。挑戦者で同級12位の原隆二(大橋/19勝11KO1敗)は元東洋太平洋、日本王者。昨年10月に現WBO世界ミニマム級王者の田中恒成(畑中)の前にプロ初黒星を喫し、東洋太平洋のベルトを手放したが、今年5月の再起戦をクリアし、世界初挑戦のチャンスが巡って来た。機動力を発揮し、テンポの速い攻撃を仕掛ける高山に対し、鋭い出入りからのダイナミックな攻めが持ち味の原。最軽量級らしいきびきびとした攻防が展開されるだろう。海外を含め、世界戦だけで15戦と豊富なキャリアを有する32歳のベテラン王者と挫折を知る25歳の挑戦者との新旧対決にも注目だ。

 また、同じリングでは世界主要4団体でランク入りしている石田匠(井岡/19勝10KO)が、木村隼人(ワタナベ/23勝15KO7敗)を迎え撃つ日本スーパーフライ級タイトルマッチも行われる。国体(ジュニア)王者からプロ転向し、全勝を続ける石田に対し、16歳のときからタイでプロキャリアを積み、その後も韓国、フィリピンを拠点に活動した異色の経歴を持つ木村。韓国時代は韓国スーパーフライ級王座、WBOアジア・パシフィック暫定同級王座を獲得しているが、日本王座挑戦はこれが初めて。世界を見据える正統派ボクサーの石田と奔放なボクシングを展開する木村の顔合わせも興味深い。

京都で大森、徳永が日本王座戦

14戦14勝9KOの日本バンタム級王者・大森将平が高校の先輩である向井寛史を迎え撃つ 【写真は共同】

 ほかにも9月は多くの日本タイトルマッチが行われるが、最注目は16日、島津アリーナ京都の日本バンタム級タイトルマッチだ。今年4月、益田健太郎(新日本木村)を敵地・後楽園ホールで堂々3回TKOに降し、圧巻の戴冠劇を見せた大森将平(ウォズ/14勝9KO)はスケールの大きさを感じさせるサウスポー。その大森が初防衛戦の相手に指名したのが南京都高校(現・京都廣学館高校)の先輩で村田諒太(帝拳)とは同学年の向井寛史(六島/11勝1KO3敗2分)。すでに4団体でランク入りする大森。2度の世界挑戦経験を持つ向井とのサウスポー対決をクリアし、高校の大先輩である山中慎介の背中を追いかけられるか。

 また、この日は大森と同門で同じく4月に王座決定戦を制し、日本ライト級王者となった徳永幸大(ウォズ/15勝10KO2敗)が同級1位の鈴木悠平(真正/16勝12KO4敗)の挑戦を受ける初防衛も行われる。勢いに乗る長身パンチャーの徳永に対し、3度目の日本タイトル挑戦に懸ける鈴木の思いも強いはずで白熱した試合になりそう。古都で行われる日本タイトルマッチは1983年1月以来、2度目。そのときもダブルタイトル戦だったが、地元のジムに所属する王者が揃い踏みするのは史上初めてとなる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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