「30キロを過ぎてから」に注目!=瀬古さん、猫さんらのマラソン観戦術
世界選手権の中でも注目される種目となるのが男女マラソン。男子は大会初日22日の最初の種目として朝8時35分から、女子は大会最終日30日の朝8時30分に号砲が鳴る。
どちらも2時間を越える長丁場のレース。陸上初心者にとっては、どこが勝負のキモになるかは分かりづらいところ。そこで今回は、瀬古利彦さん、有森裕子さん、猫ひろしさん、テレビ実況を担当するTBSアナウンサーの2人に、それぞれのマラソン注目ポイントを聞いてみた。
瀬古利彦さん(DeNAランニングクラブ総監督)のミカタ
顔のつや、汗のかき具合、目力に注目。また、表情の変化がない人が調子が良いと見ています。
記憶に残っているレース:08年大阪国際女子マラソン
福士加代子選手の初マラソン。何度も転びながら這うようにして、それでも完走した姿と精神力に感動した。そして「この子は今後マラソン選手として活躍する」と予感した。
初マラソンでは失速してしまった福士加代子。それでも完走した精神力は強くなる兆しがあった 【写真:アフロスポーツ】
有森裕子さん(元マラソン選手)のミカタ
多くの選手は、30キロまで普通に走れます。それ以降になると練習で積み上げてきたものが見えるので、そこからの走りに注目しています。特に選手の表情は、選手の状態を表しているし、マラソンは気持ちがタイムに反映される種目なので注目しています。
記憶に残っているレース:04年名古屋国際女子マラソン
同年に行われたアテネ五輪の女子マラソン代表選考会となったレース。土佐礼子選手が最後に粘って2時間23分台(2時間23分57秒)で走り、五輪代表の切符をつかみました。土佐選手の粘りの走りに感動し、後にも先にもマラソンのレースで涙したのはこれだけ。
04年名古屋国際女子の土佐礼子は、驚異的な粘りから優勝を果たし五輪出場を決めた 【写真は共同】
猫ひろしさん(タレント・マラソン選手)のミカタ
シドニー五輪で見せた高橋尚子のレースは、まさしく「見ている人が楽しく、幸せになるようなレース」だった 【写真:ロイター/アフロ】
30キロを過ぎてからがマラソン。そこからは急に足も動かなくなるので、上半身で引っ張る腕振りや、上半身の筋肉の付き方は注目しています。
記憶に残っているレース:00年シドニー五輪 女子マラソン
高橋尚子選手が陸上で日本女子史上初の金メダルを獲得したレース。前評判、レース展開、表情とも神懸かっていました。18キロ過ぎからのスパート、リディア・シモン選手とのデッドヒート、34キロでのサングラスを投げ捨ててからのスパート、ゴールテープを切った時の笑顔、64年ぶりの金メダル、当時の五輪最高記録。国民からの期待を裏切らず、メダルを獲得したところ、そして国民栄誉賞、最初から最後まで神懸かっていましたニャー。
佐藤文康さん(TBSアナウンサー)のミカタ
位置取りを意識しすぎると体力の消耗につながるし、位置取りを間違えれば転倒もある。逆にそこがスパートのタイミングだったりします。それと寡黙なイメージがあるマラソンランナーの人柄が出るのが、給水ボトルの飾りつけ。あの人が花柄(笑)! など意外な発見があって興味深いです。
記憶に残っているレース:83年福岡国際マラソン
瀬古利彦選手とジュマ・イカンガー選手の壮絶なデッドヒートは幼少期の私の記憶にもはっきりと残っています。
瀬古利彦とジュマ・イカンガーの壮絶なデッドヒートはトラックまでもつれ込み、最後の最後まで目が話せない展開だった 【写真は共同】
土井敏之さん(TBSアナウンサー)のミカタ
選手の「あれ、変わったな?」という部分を見逃さないように気をつけています。集団の位置取りや、付いていた選手が役割を変えたなど、時々刻々変わる部分に、レースが動くヒントがあると考えています。
記憶に残っているレース:05年世界陸上ヘルシンキ大会 男子マラソン
日本男子が世界大会で最後にメダルを取ったレース。日本記録保持者、高岡寿成選手が注目される中、尾方剛選手が「やってやる」の思いを胸に快走。取材で聞いていたのに、私自身初の世界陸上マラソン実況で、どこまで伝えられたか……。いまだに苦いものが残ります。
覇権をかけたレースに興奮(写真は05年世界陸上ヘルシンキ大会の尾方剛) 【写真:ロイター/アフロ】
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