監督は9回、小笠原に代打を考えていた 東海大相模の優勝は“動いた”結果

楊順行

投打がかみ合った仙台育英

仙台育英は粘った末に1番・佐藤将が3点適時三塁打を放ち同点に追いつき、流れは来たかに見えた 【写真は共同】

 敗れはしたが、仙台育英も好感の持てるチームだった。佐々木順一朗監督が「球場全体が後押ししてくれている」と感じたのは、決勝の6回だ。3点を追い、2死満塁のチャンス。ここで1番・佐藤将太が、2ストライクから小笠原の速球に食らいつくごとに拍手が大きくなる。1球、ファウル。ボールをはさんでもう1球、もう1球ファウル。そしてとらえた7球目、127キロのチェンジアップはセンターの頭を越える同点三塁打だ。

「あの粘り……鳥肌が立ちましたね。2点差以内で後半にいかないと苦しいと思っていましたが、あの三塁打で一気にいけるかな、と感じた」(佐々木監督)


 仙台育英も東海大相模同様、打線のつながりには目を見張るものがあった。明豊(大分)との初戦は、初回に一挙5点。滝川二(兵庫)との2回戦も、5回に4点。秋田商(秋田)との準々決勝は5回に3点、早稲田実(西東京)との準決勝は3、4回に集中打で7点。宮城大会決勝から覚醒したエース佐藤世那と打線が、がっちりかみ合った。

東北勢8校目の挑戦も優勝ならず……

 話は6月にさかのぼる。健大高崎(群馬)との練習試合では、なかなか走者を二塁に進めることができず、2対4で敗れた。もともと、佐藤世那と打力が売り物のチーム。昨秋の東北大会では4試合39得点で優勝し、3試合で6得点以上のビッグイニングがある。優勝した神宮大会も、3試合18点だ。小技の必要性がなく、あまりバント練習などもやっていない。だが健大高崎戦の反省で翌日から、なんとか走者を進めることを主眼にしたシート打撃が日課になった。走者一塁からバントで、エンドランで。走者が進めばそのシチュエーションから継続し、どう走者を進めるかは各自の判断による。その蓄積が、打線のつながりを呼んだと言える。

 仙台育英にとっては89年以来2度目、春も含めれば3度目の決勝はまたも敗戦となった。東北勢悲願の初優勝は、夏8校目の決勝進出もお預けで、「秋田中が第1回の決勝で敗れ、100周年でウチが勝って新しい世紀を迎えられればと思ったんですが」と佐々木監督。だが、ここ5年で春夏合計4回の準優勝と、充実の目覚ましい東北勢のことだ。高校野球の新世紀で、早いうちに大旗を手にするような気がする。

2/2ページ

著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント