坂本と樋口が流した涙の意味、千葉は雪辱 フィギュア日本女子が五輪出場枠とともに得たもの
坂本花織2位、千葉百音3位、樋口新葉6位。2026年ミラノ・コルティナ五輪の出場枠がかかる2025年世界フィギュアスケート選手権（アメリカ・ボストン）に臨んだ日本女子は、最大の3枠を確保した。
66年ぶりの偉業となる4連覇を目指した坂本は、ショート5位と出遅れた。3回転フリップ―3回転トウループを予定していたコンビネーションジャンプで、フリップの回転が抜けて2回転になったミスが響いた。「空中で開いてしまった時は、本当に焦った」という坂本だが、セカンドジャンプのトウループでは、きっちり3回転する強さもみせている。
「（フリップを）降りた時のスピードや体勢が『まだいける』という感じだったので、なんとか踏ん張って『最後まで戦おう』という気持ちでやりました」
1日おいて行われたフリー、坂本は最終グループの2番滑走で登場。「会場入りする前からとてつもなく緊張して」いたという坂本は、引き締まった表情でスタート位置についた。軽快な『シカゴ』の旋律に乗り、冒頭で大きなダブルアクセルを決めると、次々にジャンプを降りていく。コンビネーションジャンプで二つ回転不足がついたものの、スピン・ステップではすべてレベル4を獲得。演技を終えた坂本はガッツポーズしながら跳び上がり、喜びを爆発させた。総立ちとなった観客が大歓声で讃える中、坂本はリンクサイドで見守っていた中野園子コーチに駆け寄った。
暫定首位に立った坂本は、キスアンドクライの隣に設置されたリーダーズチェア（暫定首位の選手が座る椅子）で、残る4人の演技を見守った。最終滑走者として演技したショート首位のアリサ・リウ（アメリカ）が完璧な滑りを披露して優勝を決めると、坂本はアリサと長いハグを交わした。
リンクサイドからミックスゾーンまで涙を流し続けていたという坂本は、銀メダリストとして臨んだ会見でその理由を説明した。
「緊張感の中で、何とか自分の演技をやり終えて。で、リンクサイドで残りの4人の選手の演技を見て、その4人の演技に感動して泣いて。アリサが優勝してすごく嬉しくて泣いて、それと同時に悔しくて泣いて。いろんな感情がこみ上げて、あんな感じになりました」
会見では、北京五輪後の2022年から2024年まで世界選手権を3連覇した坂本に、「2位としてオリンピックの年に向かうということで、少し楽になった部分はあるか」という質問があった。坂本は「もちろん、今回の大会に向けて4連覇という目標を掲げてやってきて『それが達成できなかった』というのはあるんですけど」と口にした後、と少し考えて言葉を継いだ。
「荷が軽くなったっていえば、軽くなったし。でもこの今回の結果を経験できたおかげで、次はチャレンジャーの気持ちで挑めるので。それは次のミラノオリンピックに向けて、大事な経験だったんじゃないかなって思う。『この悔しさは、きっと必要な経験なんだろうな』って感じてます」
坂本は、3度目の五輪シーズンを前に、挑戦者としての立場を取り戻した。
66年ぶりの偉業となる4連覇を目指した坂本は、ショート5位と出遅れた。3回転フリップ―3回転トウループを予定していたコンビネーションジャンプで、フリップの回転が抜けて2回転になったミスが響いた。「空中で開いてしまった時は、本当に焦った」という坂本だが、セカンドジャンプのトウループでは、きっちり3回転する強さもみせている。
「（フリップを）降りた時のスピードや体勢が『まだいける』という感じだったので、なんとか踏ん張って『最後まで戦おう』という気持ちでやりました」
1日おいて行われたフリー、坂本は最終グループの2番滑走で登場。「会場入りする前からとてつもなく緊張して」いたという坂本は、引き締まった表情でスタート位置についた。軽快な『シカゴ』の旋律に乗り、冒頭で大きなダブルアクセルを決めると、次々にジャンプを降りていく。コンビネーションジャンプで二つ回転不足がついたものの、スピン・ステップではすべてレベル4を獲得。演技を終えた坂本はガッツポーズしながら跳び上がり、喜びを爆発させた。総立ちとなった観客が大歓声で讃える中、坂本はリンクサイドで見守っていた中野園子コーチに駆け寄った。
暫定首位に立った坂本は、キスアンドクライの隣に設置されたリーダーズチェア（暫定首位の選手が座る椅子）で、残る4人の演技を見守った。最終滑走者として演技したショート首位のアリサ・リウ（アメリカ）が完璧な滑りを披露して優勝を決めると、坂本はアリサと長いハグを交わした。
リンクサイドからミックスゾーンまで涙を流し続けていたという坂本は、銀メダリストとして臨んだ会見でその理由を説明した。
「緊張感の中で、何とか自分の演技をやり終えて。で、リンクサイドで残りの4人の選手の演技を見て、その4人の演技に感動して泣いて。アリサが優勝してすごく嬉しくて泣いて、それと同時に悔しくて泣いて。いろんな感情がこみ上げて、あんな感じになりました」
会見では、北京五輪後の2022年から2024年まで世界選手権を3連覇した坂本に、「2位としてオリンピックの年に向かうということで、少し楽になった部分はあるか」という質問があった。坂本は「もちろん、今回の大会に向けて4連覇という目標を掲げてやってきて『それが達成できなかった』というのはあるんですけど」と口にした後、と少し考えて言葉を継いだ。
「荷が軽くなったっていえば、軽くなったし。でもこの今回の結果を経験できたおかげで、次はチャレンジャーの気持ちで挑めるので。それは次のミラノオリンピックに向けて、大事な経験だったんじゃないかなって思う。『この悔しさは、きっと必要な経験なんだろうな』って感じてます」
坂本は、3度目の五輪シーズンを前に、挑戦者としての立場を取り戻した。
千葉の収穫は「歓声をエネルギーに変える感覚」
昨年に続き2回目の世界選手権出場となった千葉は、前回大会のショート『黒い瞳』で痛恨のミスをしている。最後のジャンプとして予定していた3回転ルッツが1回転になってしまったため13位と出遅れ、総合7位という結果だったのだ。
今季のショートは、世界選手権の開催地・ボストン出身のドナ・サマーが歌う『ラストダンス』。リアクションが大きいボストンの観客が、さらに沸く選曲だ。冒頭に跳んだ3回転ルッツ―3回転トウループは、セカンドジャンプが4分の1回転不足と判定されたものの着氷。ダブルアクセルを決め、フライングキャメルスピンを終えたあたりから「すごくハイテンションな感じでいけた」という千葉は、最後のジャンプとなる3回転フリップを成功させ、苦い記憶を払拭した。
「やっぱり去年のショート『黒い瞳』でルッツがパンクしちゃったのが、知らず知らずのうちに自分の中でトラウマになっていたんですけど、今日はそれも全部忘れるくらいハイテンションでいけたので。『練習通りのフリップが跳べたな』という感じで、すごく楽しめて良かったです」
6分間練習の時から、「しっかりと自分を俯瞰して捉えられていた」と千葉は振り返る。
「緊張と向き合えた、みたいな。緊張に合わせて、自分のバイブスもどんどん上げていけた」
声援に押された部分もあるかと問うと、千葉は「自分の心が、しっかりとポジティブな状態で臨めたので」と嬉しそうに答えた。
「それプラス声援となると、もうポジティブな方向にしかいかないということを、今日知りました。やっぱり、声援を力に変える力ってすごく大事だと思うので。これから、すごく緊張する試合を何度も経験すると思うんですけど、そういう時は如何に自分の中でポジティブに捉えられるかが大事だなと思いました」
フリーも大きなミスなく滑って銅メダルを獲得した千葉は会見に臨み、今大会で得た手応えを語った。
「今回は、ショートでその場の雰囲気に自分の流れを崩さず、むしろ観客の皆さんの歓声をエネルギーに変えるいい感覚でできたことが、一番の収穫だったかなと。これからも常にすべての試合で、いい緊張感・スケーティングを楽しむという気持ちを絶対に忘れずに、臨んでいきたいです」
一年前は雰囲気にのまれた世界選手権で、千葉は銅メダルだけではなく、声援を力に変える術をも獲得した。
今季のショートは、世界選手権の開催地・ボストン出身のドナ・サマーが歌う『ラストダンス』。リアクションが大きいボストンの観客が、さらに沸く選曲だ。冒頭に跳んだ3回転ルッツ―3回転トウループは、セカンドジャンプが4分の1回転不足と判定されたものの着氷。ダブルアクセルを決め、フライングキャメルスピンを終えたあたりから「すごくハイテンションな感じでいけた」という千葉は、最後のジャンプとなる3回転フリップを成功させ、苦い記憶を払拭した。
「やっぱり去年のショート『黒い瞳』でルッツがパンクしちゃったのが、知らず知らずのうちに自分の中でトラウマになっていたんですけど、今日はそれも全部忘れるくらいハイテンションでいけたので。『練習通りのフリップが跳べたな』という感じで、すごく楽しめて良かったです」
6分間練習の時から、「しっかりと自分を俯瞰して捉えられていた」と千葉は振り返る。
「緊張と向き合えた、みたいな。緊張に合わせて、自分のバイブスもどんどん上げていけた」
声援に押された部分もあるかと問うと、千葉は「自分の心が、しっかりとポジティブな状態で臨めたので」と嬉しそうに答えた。
「それプラス声援となると、もうポジティブな方向にしかいかないということを、今日知りました。やっぱり、声援を力に変える力ってすごく大事だと思うので。これから、すごく緊張する試合を何度も経験すると思うんですけど、そういう時は如何に自分の中でポジティブに捉えられるかが大事だなと思いました」
フリーも大きなミスなく滑って銅メダルを獲得した千葉は会見に臨み、今大会で得た手応えを語った。
「今回は、ショートでその場の雰囲気に自分の流れを崩さず、むしろ観客の皆さんの歓声をエネルギーに変えるいい感覚でできたことが、一番の収穫だったかなと。これからも常にすべての試合で、いい緊張感・スケーティングを楽しむという気持ちを絶対に忘れずに、臨んでいきたいです」
一年前は雰囲気にのまれた世界選手権で、千葉は銅メダルだけではなく、声援を力に変える術をも獲得した。