ボルトのタイムは不滅の記録!? 世界記録、日本記録の推移を考察

小川勝

夏と冬でまったく違うマラソンに

男子マラソンにおける、世界記録と日本記録の推移 【スポーツナビ】

<記録推移>
世界記録:99年2:05:42(ハーリド・ハヌーシ)⇒02年2:05:38(ハーリド・ハヌーシ)⇒03年2:04:55(ポール・テルガト)⇒07年2:04:26(ハイレ・ゲブラシラシエ)⇒08年2:03:59(ハイレ・ゲブレシラシエ)⇒11年2:03:38(パトリック・マカウ)⇒13年2:03:23(ウィルソン・キプサング・キプロティチ)⇒14年2:02:57(デニス・キメット)

世界シーズンベスト:01年2:06:50(ジョフリー・キプロノ)、02年2:05:38(ハーリド・ハヌーシ)、03年2:04:55(ポール・テルガト)、04年2:06:14(フェリックス・リモ)、05年2:06:20(ハイレ・ゲブラシラシエ)、06年2:05:56(ハイレ・ゲブラシラシエ)、07年2:04:26(ハイレ・ゲブラシラシエ)、08年2:03:59(ハイレ・ゲブレシラシエ)、09年2:04:27(ダンカン・キベト・キロング)、10年2:04:48(パトリック・マカウ)、11年2:03:38(パトリック・マカウ)、12年2:04:15(ジョフリー・ムタイ)、13年2:03:23(ウィルソン・キプサング・キプロティチ)、14年2:02:57(デニス・キメット)、15年2:04:42(エリウド・キプチョゲ)

日本記録:00年2:06:51(藤田敦史)⇒02年2:06:16(高岡寿成)

日本シーズンベスト:01年2:07:52(油谷繁)、02年2:06:16(高岡寿成)、03年2:07:52(国近友昭)、04年2:07:50(高岡寿成)、05年2:07:41(高岡寿成)、06年2:08:49(奥谷亘)、07年2:07:13(佐藤敦之)、08年2:08:36(大崎悟史)、09年2:09:16(佐藤敦之)、10年2:09:34(藤原新)、11年2:08:37(川内優輝)、12年2:07:48(藤原新)、13年2:08:00(前田和浩)、14年2:08:09(松村康平)、15年2:07:39(今井正人)

※注目ポイント
1、21世紀に入り、世界記録が次々と更新されている
2、08年以降に記録された世界記録はすべて9月開催のベルリンマラソン
3、02年に高岡寿成が日本記録を更新して以降、2時間6分台を記録した選手がいない
<解説>
 男子マラソンは近年、世界記録が続出している。2008年、11年、13年、14年に世界記録が出ており、08年の時点で2時間3分59秒だった世界記録は、現在では2時間2分57秒まで縮まっている。陸上競技の五輪種目の中で、過去10年間に、これほど大幅に記録が伸びた種目はほかにない。

 その一方で、世界選手権でのマラソンの優勝タイムは、09年の大会で2時間6分54秒という大会新記録が出たあと、11年の大会で2時間7分38秒、13年の大会では2時間9分51秒と、後退している。

 08年以降、記録された4度の世界記録は、いずれも9月開催のベルリンマラソンである。五輪や世界選手権の優勝タイムは、世界歴代トップ30に入っておらず、タイムは秋や春の都市マラソン、夏に開催される五輪や世界選手権のマラソンは、タイムではなく順位を争うものと、はっきりと2つに分かれてしまったといえる。

ソトマヨルの記録を破るのも近い

男子走高跳における、世界記録と日本記録の推移 【スポーツナビ】

<記録推移>
世界記録:93年2m45(ハビエル・ソトマヨル)

世界シーズンベスト:01年2m37(ヴャチェスラフ・ヴォロニン)、02年2m37(ジャック・フライターク)、03年2m36(アレクサンデル・ワレリアンチク)、04年2m36(ステファン・ホルム)、05年2m38(ジャック・フライターク)、06年2m37(アンドレイ・シルノフ)、07年2m35(ドナルド・トーマス)、08年2m38(アンドレイ・シルノフ)、09年2m35(アンドラ・マンソン)、10年2m36(イワン・ウーホフ)、11年2m37(ジェシー・ウィリアムズ)、12年2m39(イワン・ウーホフ)、13年2m41(ボーダン・ボンダレンコ)、14年2m43(ムタズ・エサ・バルシム)、15年2m41(ムタズ・エサ・バルシム)

日本記録:93年2m32(君野貴弘)⇒06年2m33(醍醐直幸)

日本シーズンベスト:01年2m25(内田剛弘)、02年2m27(内田剛弘)、03年2m25(真鍋周平)、04年2m23(江戸祥彦、醍醐直幸)、05年2m27(醍醐直幸)、06年2m33(醍醐直幸)、07年2m30(醍醐直幸)、08年2m27(醍醐直幸)、09年2m28(醍醐直幸)、10年2m24(高張広海)、11年2m24(衛藤昂)、12年2m23(富山拓矢)、13年2m28(戸邉直人)、14年2m31(戸邉直人)、15年2m29(戸邉直人)

※注目ポイント
1、世界記録は93年にソトマヨルが記録し、20年以上破られていない
2、13年以降は、世界のシーズンベストが2m40を超えて近づいている
3、日本のシーズンベストもこの3年間で日本記録に近づいてきている
<解説>
 男子マラソン以外では、世界記録が長らく破られていない種目が多い。男女全43種目の中で、10年以上更新されていない種目が、25種目もある。

 その中で、今年中にも破られる可能性のある種目が、男子走高跳だ。ハビエル・ソトマヨル(キューバ)の世界記録2m45は、1993年に樹立されたもの。今年、更新されれば実に22年ぶりの世界記録になる。

 昨年、2m40以上の記録を残した選手が5人いる。現役選手のベスト記録はムタズ・エサ・バルシム(カタール)で2m43。バルシムは今年もすでに2m41を跳んでおり、世界選手権での記録更新もあるか注目される。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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