女子と男子、それぞれの中国戦の重み 日々是東亜杯2015(8月7日@武漢)

宇都宮徹壱

ハリルホジッチの長いミーティングの内容とは?

練習前にミーティングを行うハリルホジッチ監督。この日は23分にわたり熱弁をふるった 【宇都宮徹壱】

 大会7日目。東アジアカップ開幕からちょうど1週間となるこの日もノーマッチデー。残すは土曜日の女子と日曜日の男子の最終戦を残すのみとなった。思えば先週の金曜日は、北京行きの飛行機がなかなか羽田から飛ばず、一刻も早く武漢に到着したい思いでいっぱいだった(結局、1日遅れの到着となった)。あれほど「憧れの地」と思われた武漢であったが、実際に来てみると毎日がホテルとスタジアムの往復で(これはある程度は予想していた)、しかも女子も男子もここまで未勝利(こちらはまったく予想していなかった)。選手たちは「このまま1勝もできずに帰りたくない」とか「最後は勝利で大会を終えたい」と語っているが、その気持ちは取材するわれわれもまったく同じである。

 この日は前日と同じく、宿泊先からタクシーでおよそ45分の距離にある、武漢FAトレーニングセンターで行われるトレーニングを取材した。9時30分からは男子が、そして10時からは女子のトレーニングが予定されており、両方が一度に見られるのは非常に有難い。女子は冒頭15分のみの公開となっていたが、男子は今日もオープンなのでまんべんなく両方の取材をこなすことができる。先に始まった男子のトレーニングは、いつものようにヴァイッド・ハリルホジッチ監督が選手全員を集めてミーティングを開始。昨日は15分だったが、今日は20分を過ぎてもまだ続いている。「そろそろ女子の練習会場に移動したほうがいいな」と考え、いったんその場を離れることに。あとで同業者に確認したら、今日のミーティングは23分も続いたそうだ。

 このハリルホジッチによる練習前の長いミーティングは、取材現場ではちょっとした謎になっている。果たして、どんなことが語られているのだろうか。この日はゲーム形式の練習がなかったこともあり、練習後のミックスゾーンではそのことに関する質問が相次いだ。それに対する選手の答えは──。「強い気持ちだったり、今の日本に足りないところだったり、球際だったり、フィジカルのことだったり」(倉田秋)。「もっと身体を作らないと、という話は今日もしていましたね」(藤田直之)。「全員で勝ちに行こうということですね、簡単に言えば。あとはしっかりとトレーニングすることでレベルが上がるから、しっかりやっていこうということですかね。(細かい指示は)特にないです」(丹羽大輝)。以上のコメントから類推するに、ミーティングというよりも、指揮官による恒例の訓示といったほうが正しいかもしれない。もっとも、40度近い炎天下で選手を20分以上立たせたまま行う今のスタイルには、正直なところ違和感を覚えないわけでもないが。

珍しく声を荒らげた佐々木監督

W杯優勝メンバーのひとりである高瀬(中央)は、中国戦に勝利する重要性について語った 【宇都宮徹壱】

 中国戦を翌日に控えた女子は、ミーティングや訓示を行うこともなく、すぐにアップをスタート。その後、人が入れ替わる4対2や2人1組のパス練習とメニューをこなすうちに非公開となった。佐々木則夫監督は、トレーニングをコーチングスタッフに任せて、遠くから選手たちを見守っている。ただし練習の最後には選手を集め、「カツを入れる」シーンがあったという。キャプテンの川村優理は、こう語る。

「みんな口では『チームワークが大切だ』だの『やらなきゃいけない』だの言っていても、じゃあそれがピッチで表現されているかというと、監督の目からしたらまだまだだったから(厳しい言葉で)言われたんだと思う。そう言ってもらえるのは、選手としてはありがたいし、まだまだやらなきゃいけない。それだけみんな期待されているということなので、最後の試合は勝って終わることができたらいいなと思います」

 一方、今回3人しかいない2011年ワールドカップ(W杯)優勝メンバーのひとりである高瀬愛実は、若い選手たちについて「私よりも技術はあるんだけれど、やっぱり先輩たちは技術も勝負強さもしっかり持っていたので。あとは『戦う』というところが一番かなと思います」と指摘した上で、中国戦に勝利することの重要性についてこう続けた。

「負けて学ぶことは多いという方もいらっしゃると思いますけれど、(自分たちは)負けに行っていないですし、勝ちに行って負けるからこそ得るものがある。勝ちに行く姿勢が見せられないまま(終わるの)ではなく、しっかり勝ちに行く姿勢を見せた上で勝てたら、すごく良い経験になると思います」

 ハリルホジッチと佐々木、両監督とも指導スタイルやキャラクターには違いがあるものの、大会のラストマッチとなる中国戦の結果を重視している点では完全に一致している。ミーティングが必要以上に長くなったり、珍しく声を荒らげてしまうのも、そうした想いの発露であるのは間違いないだろう。なでしこに関しては、もし3連敗となれば大会史上初の最下位が確定し、彼女たち自身もリオデジャネイロ五輪予選に向けたレースから大きく後退する可能性は高まる。「経験を積むため」の戦いは、もう終わった。中国戦こそは、最後まで諦めずに粘り強く戦い、そして勝利を笑顔で喜び合う、なでしこ本来の姿を見せてほしい。そう、切に願う次第だ。

<翌日につづく>
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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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