後半の猛追を可能にした戦略とメンタル 渡部香生子が200個メで第1号の銀
冷静なレース展開を可能にしたもの
「楽しもうと思って臨めた」レースで力を出し切り、最高の笑顔を見せた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
渡部は6月の欧州グランプリから日本には戻らず、欧州で世界選手権に向けた調整を続けてきた。約2カ月半におよぶ長丁場の遠征中には、「自信がない」と不安がる様子も見せたという。それでも、「先のことを考えても仕方がないし、ひとつひとつの練習をやろう」という竹村コーチの励ましのもと、徐々に調子を上げていった。
トレーニングの充実は心理面にも大きな影響を与えている。今大会中、ほかの日本人選手たちが力みや緊張からタイムを崩すなか、渡部は決勝を振り返ってこう語る。
「緊張も楽しみというか、いい緊張感という感じです。プレッシャーを感じなかったのですが、一番に楽しもうと思って臨めたことがよかったと思います。(楽しもうと思えた要因は)いい練習ができて、自信があったから」
2年前とは違う、竹村コーチとの出会い
ここまでの成長には、2年前から師事するようになった竹村コーチの存在が大きいという。以前は何でもマイナスに考えてしまう傾向があった渡部に対し、竹村コーチは「考えても仕方がないことは考えない。できることをどうするか考えなさい」とアドバイスを送り続けてきた。
「(竹村コーチが)これまでの自分の考え方まで変えてくれて、感謝しているし、これからも一緒に頑張っていきたいなと思います」(渡部)
今大会の「一番の山場」と捉えていた個人メドレーを最高の形で乗り越えた渡部は、この後には本職の100と200メートル平泳ぎを残している。同日に行われた100メートル平泳ぎでは既に決勝進出を決めており、さらなるメダル獲得に期待がかかる。
「この流れを明日以降につなげたい」と語る渡部には、最高の“カナコスマイル”をまた見せてもらいたい。
(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)