2冠獲得の渡部香生子が残す伸びしろ 新たな課題は手足のバランス調整

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表彰台で笑顔をみせる渡部 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「50メートルで優勝できると思っていなかったし、こんなタイムが出せるとも思っていなかったので、とてもうれしいです」

 弾ける笑顔でそう声を弾ませた渡部香生子(JSS立石)は、日本選手権(東京・辰巳国際水泳場)の開幕日となる7日に行われた女子50メートル平泳ぎで、日本記録まであと0秒03に迫る31秒07で優勝。続く、大会3日目に行われた女子100メートル平泳ぎでも1分6秒45で優勝し、今大会2冠を獲得した。連覇を達成した100メートルでは派遣標準記録を突破。今夏の世界選手権(ロシア・カザン)の代表にも内定している。

50メートルでつかんだスタートのコツ

「足だけではなく全身を使って飛び出すように」スタートを改善 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 本来200メートルを最も得意としており、後半の伸びに定評がある渡部。「一番苦手だと考えている種目」という50メートル平泳ぎでも優勝できた要因として、本人はスタートのコツをつかんだことを挙げている。

 スタートのコツを「背中で反応して、背中の筋肉で飛ぶ感じ」と、渡部は説明する。指導した竹村吉昭コーチによると、「今までは前の足を蹴ったあとに、後ろ足が付いてくる感じだった。そこを両足で蹴るイメージにし、足だけではなく全身を使って飛び出すようにした」という。外国人選手の映像を見て研究を重ね、より強く飛び出せるような修正を加えた渡部。「スタートでリードすることによって、気持ちに余裕も出てきてそのあとの泳ぎにつながる」と、効果を実感している。

ウエイトトレーニングの功罪

精力的に取り組んできたというウエイトトレーニングの成果も 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 強化されたのはスタートだけではない。精力的に取り組んできたというウエイトトレーニングの成果により、体が大きくなったことを照れながら明かしてくれた。筋肉がついたことにより、「プルが力強くかくことができている」という。

 ただ、その筋力強化が新たな問題を生んだのかもしれない。優勝こそ果たしたものの、100メートル平泳ぎ決勝の記録は、昨年自身が記録した1分5秒88の日本記録を0秒57下回った。

 決勝も「スタートは良かった」と変わらぬ手応えを得たが、「最後の25メートルがきつかった」と終盤に伸び悩んだ。その要因について竹村コーチは「キックで前にいけるのが彼女の持ち味。比率が変わらないままで、手がうまく使えればと思っていたが、逆に手が行き過ぎている」と分析。ストローク数が増えていることを指摘した。

バランスを取り戻し、より強く

世界のステージでどこまで通用するのか、進化した渡部に期待 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 新たな問題が生まれたが、状態は決して悪くない。この日行われた女子200メートル個人メドレー準決勝でも、最後の自由形を「半分くらい」というほど力を落とし、余力を残した状態で決勝進出を決めている。

 スタートの改善に加え、この日の決勝で課題を残した手足のバランスを取り戻したとき、渡部は残り2種目(200メートル個人メドレーと200メートル平泳ぎ)を制して4冠を獲得するだけでなく、世界と戦うための新たな世界に足を踏み入れるかもしれない。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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