手探り状態が続く岡崎のレスター挑戦 チームの整備が進まず、起用法は未確定

田嶋コウスケ

来季の戦い方は不確定な部分が多い

戦力補強が進まず、来季の戦い方は不確定な部分が多い。ラニエリ(右)はどんなチームを作るのか 【写真:Action Images/アフロ】

 とはいえ、昨シーズンは残留争いの真っただ中にいたレスターの目標は、やはり「プレミア残留」である。ところが、肝心の選手補強が思うように進んでいない。むしろ戦力収支は、若干のマイナスと言っても過言ではないだろう。

 最大の痛手は、ピッチ内外でリーダーとしてチームをけん引し、残留の立役者となったエステバン・カンビアッソの退団。ラニエリも元アルゼンチン代表MFの慰留に動いていたが、契約延長で合意に至らなかった。今オフで補強が決まっているのは、岡崎と攻撃型サイドバック(SB)のクリスティアン・フクス(元シャルケ)の二人のみで、補強の必要性が叫ばれているセンターバックとセントラルMFは、現時点で手付かずのままだ。

 チームとしての戦い方も、ハッキリとは見えてこない。昨シーズン序盤は4−4−2や4−2−3−1など複数のフォーメーションを併用していたが、前がかりになる傾向が強すぎるゆえに不用意な失点を重ね、チームは最下位に低迷した。そこで、シーズン後半戦から3−5−2システムを採用した。守備時はSBが最終ラインに加わり、実質的な5バックに変わる堅守型システムを導入したことで成績が向上し、ラスト9試合で7勝の猛スパート。なんとかプレミア残留につなげた経緯がある。

 しかし、3バック採用時の攻撃陣に目を向けると、縦に素早く仕掛ける速攻、もしくはウジョアへのロングボールによる単調なアタックばかりで、一本調子に陥る傾向が強かった。特に、前線へ効果的なラストパスを供給できるMFの欠如は顕著で、中盤の構成力不足はレスターが抱える最重要課題だった。勢いに乗ったら止まらないが、守備組織が確立されている上位陣には手が出ない──。終盤に勝ち星を重ねたのは下位クラブ相手がほとんどで、事実、リンカーン戦でも前線にパスが入らず、岡崎は何度も中盤に降下してボールをもらいにいった。

 ドリブルによる推進力とパスセンスを兼備するセントラルMFのエンゴロ・カンテ(カーン/フランス)や、高いパス展開力を持つセルクチュ・イナン(ガラタサライ/トルコ)を補強のトップターゲットに据えていると言われるが、失点しないことに重きを置くと言われるラニエリが、この問題をどう解決していくか。4−2−3−1を好むと言われるイタリア人指揮官が、レスターで攻守のバランスをどのようにとっていくかに注目が集まる。

現時点での評価は上々

岡崎はライバルとのポジション争いに勝利し、レギュラーの座をつかめるか 【写真:Action Images/アフロ】

 もちろん、採用フォーメーションや戦い方によって岡崎の起用法も変わってくる。昨シーズンは、得点源のウジョアとイングランド代表歴のあるFWジェイミー・バーディで2トップを編成することが多かった。前者がターゲットマンとしてペナルティーエリア付近に陣取り、後者がその周囲を動きまわることで攻撃を編成していた。岡崎のライバルは、このバーディになると見られる。ただ得点力で言えば、マインツで15ゴール(2013−14シーズン)、12ゴール(14−15シーズン)と二年連続で二桁得点をたたき出した岡崎の方が、昨季5得点のバーディよりも分がある。1トップ採用時でも、サイドから飛び出してネットを揺らす決定力、中盤を支える献身的な守備でアピールしていけば、4−2−3−1のサイドMFとしてレギュラー獲りに活路を見いだせるはずだ。特に、高い守備意識はラニエリ好みと言える。

 先述のリンカーン戦を取材した地元紙『レスター・マーキュリー』のロブ・ターナー記者は「運動量豊富で機動性が高い。寄せの速さと当たりの厳しさに順応する必要はあるが、イングランドのフットボールに適応できる資質はあるように見える。ウジョアとのリンクプレーも悪くない」と岡崎の第一印象について語っていた。

 だが、同時にこうも言う。

「前線のアタッカーは、数が十分にそろっている。岡崎はウジョア、バーディ、クロアチア代表のアンドレイ・クラマリッチとのレギュラー争いに勝たなければならない。出場機会を得たら、ゴールやアシストの結果で応えていく必要がある」

 11年ぶりにプレミア復帰を果たしたラニエリ、そしてイングランド初挑戦の岡崎も、まだ手探りで道を進んでいる。プレミアリーグの開幕は、約2週間後の8月8日(サンダーランド戦)。岡崎にとって本当の勝負はここからである。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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