固定観念にとらわれない岡崎慎司 迷いを捨て、柔軟性のあるストライカーへ

中田徹

監督交代のヘルタが勝利

GKが退場したこともあり、ヘルタ・ベルリンに敗れたマインツの岡崎慎司 【Bongarts/Getty Images】

 ブンデスリーガ第19節までを終えて17位と降格圏であえいでいたヘルタ・ベルリンは5日、ヨス・ルフカイ監督を解任。その2日後に行われた第20節のマインツ05戦に2−0で勝利して、順位を一気に14位まで上げた。

「ちょっと疲れがある」という理由で、スタメンから外れた細貝萌は、後半21分から途中出場。同じく途中出場したペーター・ニーマイヤーとともに中盤の守備に奮闘した。試合後の細貝は「今日みたいに、みんなが情熱をもってやらないといけない」と力を込めて語っていた。

 一方、13位に落ちたマインツは、6試合ぶりに勝利した16位のボルシア・ドルトムントとの勝ち点差が3まで縮まってしまった。試合の分岐点は前半32分、マインツのGKロリス・カリウスがバレンティン・ストッカーへのファウルで一発退場になった上、ヘルタにPKを与えてしまった事。ビハインドを負った上、数的不利になったマインツは、前半42分にも守備が乱れてヘルタに追加点を許してしまった。

「ゲーム運びとしては、ハッキリ言ってマインツは厳しかった。自分たちにとってはすごく楽な試合運びだったと思います」(細貝)

 マインツのワントップ、岡崎慎司は、「ヘルタはコンパクトに引いて、後ろを固めて来るだろうから、我慢する事が大事。僕は後半勝負でも良いと思っていた」というプランで試合に臨んだが、GK退場のアクシデントで、もくろみが外れてしまった。

岡崎「いろんなことを考えすぎた」

 この日の岡崎は前線でボールを収める事ができず、決定的なシュートも無く、さらにチームは負け、がっかりしていてもおかしくない状況だった。しかし、試合後は悔しさをにじませるわけでもなく、どこか淡々としていた。

「最近は、これもサッカーかなと思うようになってきた。うまくいく時もあれば、うまくいかない時もあると思う。それで一喜一憂する必要はない」(岡崎)

 まさか達観したわけではないだろうが、そうとも受け止められそうな口調だった。

「いろんなことを考えすぎた。ワールドカップもアジアカップも負けて、『どうしたら勝てるんだろう』とか、“たられば”のことばっかり思って、結局目の前の事に集中していなかった。試合でも中途半端なプレーになった。迷っている時はミスすると『あれ、今の俺、違う動きをしたかな』とか、そういう感じのメンタルに入っていった。本当に自信のある選手は、ミスしても別に何とも思っていないはず。今までの僕は欲がありすぎて、もっとこうしておけば良かったとか、いっぱいあったけど、ミスもサッカー。切り替えれば良い事。そういうふうに今は考えています」(岡崎)

ストライカー像は描いていない

 話を進めていくと、やはり岡崎の口から「あそこは逆にターンしておけば良かった」「あそこは前にトラップしておけば良かった」「シュートまでの選択ミスが何回かあった」と反省の言葉が出てくるのは彼らしいところ。そして徐々に話題はストライカー論へ膨らんでいく。

「これからは積み重ねてきたものを出していきたい。シュツットガルトでは中盤でボールを受けたりとか幅を広げる事ができたし、マインツで1年半、FWとして攻撃的に前に残らせてもらったけれど、今はどっちも出せるようにして、経験をもっと還元していかないと。もう若くないし、(FWとして)生きるとか生かされるとかではなく、その先を行かないといけないと思う」(岡崎)

 しかし、「ストライカーはこうあるべき」という像は描いていない。

「自分は動かないFWじゃない。ムービングストライカーみたいなタイプなんで、固定観念にとらわれず、もっと自分は柔軟性を持ちたい。まだまだいろんな事をやっていきたいです」(岡崎)
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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