前半戦“陰のMVP”…中村晃の適応力=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

王会長が中村の「一本足打法」を解説

昨季リーグ最多安打、今季も前半戦で打率3割以上をマークする中村。天性の適応力でソフトバンク強力打線を陰で支える 【写真は共同】

 先ごろ、王貞治・福岡ソフトバンク球団会長に30分間ほどインタビューをする機会に恵まれた。現在のソフトバンクで活躍する打撃陣について“解説”をしてもらったのだ。その模様についてはヤフオクドーム内の「王貞治ベースボールミュージアム」で開催中の<開館5周年記念『王貞治と熱男バッター展』>にて映像でご覧いただけるので、機会があればぜひ。その中で、中村晃のバッティングについて語った言葉がとても印象に残っている。

「右足を大きく上げて打ちにいきますが、僕の(一本足打法)より粘り強い。見てもらえれば分かりますが、地面に着きそうになってから腰をグーッと入れて、さらに踏み出していく。時間差攻撃(緩急)を見極めて、ボールとバットの芯を結ぶ。だから空振りが少ないのでしょう」

 あの王会長が、代名詞ともいえる「一本足打法」について、しかも自身との比較も交えながら語る。筆者は「王選手」をリアルタイムで見ていない世代だが、それでも鳥肌モノだった。

柳田、松田らの打順固定で安定感

 中村は昨季リーグ最多安打のタイトルを獲得した。今季も引き続き好調で、前半戦終了時点では打率3割2分6厘(リーグ4位)をマークしており、今や球界屈指の好打者の1人に数えられる。

 チームもパ・リーグで独走態勢を固めつつある。前半戦ラストカードだった2位・北海道日本ハムとのビジター2連戦(いずれも帯広)を1勝1敗で乗りきり、ゲーム差「3.5」をキープした。3位の埼玉西武には7.5差だ。また、15日には12球団最速で今季50勝。81試合目での到達は、過去10年ではリーグ断トツV(2位に17.5差)を達成した2011年の79試合に次ぐスピードである。

 その立役者――いわゆる前半戦MVPは?と問えば、おそらく最も多く名前が挙がるのは柳田悠岐だろう。3番バッターとして全試合に出場し打率3割6分7厘、17本塁打、52打点、16盗塁の成績。その数字もさることながら、柳田のプレーはインパクトが強い。それが彼自身の人気の高さにも直結している。また、選手会長の松田宣浩も成績では負けていない。打率3割3厘、22本塁打、62打点。とても6番打者とは思えないほどの活躍だ。サヨナラ本塁打2発(4月2日オリックス戦、6月11日阪神戦)という勝負強さもまた、さすがのひと言に尽きる。

 確かに表立った活躍を見せたのは、ソフトバンク強力打線の中軸バッターたちだ。3番・柳田、4番・内川聖一、5番・李大浩、6番・松田はホークスの鉄板打順。4月14日以降でこの並びが崩れたのはたった2試合のみ。打順は固定して戦う方がチームは安定するし、選手としてもリズムが作りやすい。ホークスの強さの一因がここにあるのは、間違いないところだ。

 だからこそ、中村の働きが光るのである。

1/2ページ

著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント