ユニバ代表が獲得した“良い銅メダル” 価値ある戦いをA代表へとつなげるために
「力不足」を痛感させられたイタリア戦
日本は個性豊かな選手をそろえたイタリアに対し、準決勝でPK負けを喫した 【写真は共同】
今回のユニバ代表は全員がU−22代表(リオ五輪代表)の資格を持つ年代の選手たち。実際にU−22代表のスタッフも視察に訪れていたし、DF室屋成(明治大)のようにアジア一次予選のメンバーだった選手もいるし、「ここから五輪代表に選手を送り出したい」という趣旨のことを神川監督も繰り返し発言してきた。
海外遠征を繰り返したのは、もちろんユニバというタイトルを目指すためだが、同時に未来の代表選手を生み出す「投資」という側面もある。チーム発足から先日のコスタリカとしか「アジア外」のチームと戦っていないU−22日本代表と異なり、実に多様な相手とゲームをこなしてきている。そこで培った逞しさに筆者個人としても期待していた。「ここから五輪代表に推すべきは誰なのか?」。そういう視点で見守った大会でもある。
グループリーグを3戦全勝で突破し、準々決勝でフランスとの死闘を制し(1−0)、準決勝では素晴らしいスピリットと伝統の堅守を持つイタリアと対峙(たいじ)した。「このGKがセリエBの控えなのか!?」と素直に驚愕するプレーを見せた元U−19イタリア代表GKニコロ・マンフレディーニ(モデナFC)を筆頭に個性豊かな選手をそろえた相手に対し、PK負け(0−0、PK1−3)。日本はそれぞれの選手が「力不足」(FW澤上竜二=大阪体育大)を痛感し、チームとしての課題も露呈することとなった。
この5試合までを観て、個人として五輪代表へ推せる選手は、すでにメンバー入りしている室屋を除くとちょっといないのではないかと思い始めていた。やはり大学生相手の試合、国内での練習試合(たとえ相手がJクラブでも)と、国際大会の真剣勝負は明確に違うステージの戦いであり、通用する選手も違ってくるもの。DF湯澤聖人(流通経済大、柏レイソル内定)は「日本のチームとは守り方が違う。全部のエリアで厳しいわけではなく、サイドの深い位置とかペナ角、ペナルティーアークの付近とか『ここ!』というところで、すごく厳しくて、やらせてもらえなかった」と肩を落とした。守りのメリハリが明確な相手に対し、ここぞという場面で仕事のできる選手が日本側に乏しかったのは否めない。
成功か否かはメダルの色ではない
ブラジルとの3位決定戦はPK戦へともつれ込んだが、選手たちで蹴り手を決め、見事に全員が成功して勝利を収めた 【写真は共同】
「僕自身の安全志向が強過ぎたのかもしれない。選手の伸び伸びしたところを奪っていたのかな」とした指揮官は、3位決定戦を前に選手一人ひとりと話し合いの場を持って、思いをぶつけ合った。ある選手は自分のポジションについて直訴し、別の選手はリスクを避けてきた戦術面について意見を具申した。その過程は少し遅すぎたのかもしれないが、ただ有意義でもあった。
ブラジルとぶつかった3位決定戦は相変わらずの決定力不足ではあったが、果敢なチャレンジがあって、一方で神川スタイルを体現してテクニックのある選手たちが必死の守りを見せるシーンもしばしばあった。スコアレスのまま迎えたPK戦。準決勝ではキッカーを自ら指名した神川監督が、選手に立候補を募って蹴り手を決め、見事に全員が成功して勝利を収めて(PK7−6)銅メダルを獲得した。
「悔しい。大学の中ならもっと余裕を持ってやれるようになっておかないと、こういうところで通用しない。もっともっとやらないといけない」。澤上はそう言って前を向いたが、この姿勢をそれぞれの選手が獲得できたのであれば、やはり価値ある銅メダルだった。このユニバ代表が成功だったか否かが判断されるのはメダルの色ではない。すべては個々の選手たちが先々のステージで何を残せるか。U−22代表に何人が絡めるか、Jリーグで活躍してのA代表入りを果たすのは誰か。そのときに「あの悔しさがあったから」と振り返れるなら、このユニバ代表のトライは成功だったと言えるのだろう。