sportsnavi

世界への道を一緒に歩み出した村山兄弟
「2人で日本代表のユニホームを」

2人そろって世界陸上参加標準を突破

学生駅伝では別々の道で活躍したが、社会人になって同じ環境を選んだ村山兄弟。この夏の目標は「2人で日本代表のユニホームを着ること」
学生駅伝では別々の道で活躍したが、社会人になって同じ環境を選んだ村山兄弟。この夏の目標は「2人で日本代表のユニホームを着ること」【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「今はすごくいい状況です。練習していても楽しいんですよ。お互いが大学で学んできたことをアドバイスできますし、自分にはない強さを謙太が持っているから、その部分で刺激も受けられる。きっと謙太も同じだと思います」


 弟、紘太がそう言うと、兄、謙太も同意するようにうなずいた。


 昨年まで学生駅伝を沸かせていた村山兄弟がこの春、そろって旭化成に入社。謙太は大学駅伝界屈指の強豪、駒澤大でハーフマラソン、1万メートルで力を伸ばすと、紘太は城西大、櫛部静二監督の指導のもと、5000メートルで昨年のアジア大会代表となり、1500メートルでも2014年日本ランク1位。紘太が言うとおり、別の道を歩んだ4年でお互いが異なる種目で強さを身につけ、尊敬し合える関係を作り上げている。


 同じユニホームを身にまとうようになって約1カ月。5月9日のゴールデンゲームズinのべおか(宮崎・延岡)では、5000メートルで紘太が13分19秒62、1万メートルで謙太が27分39秒95とともに日本歴代6位の記録を残し、今年8月に中国・北京で行われる世界選手権の参加標準記録(5000メートル13分23秒00、1万メートル27分45秒00)を突破した。


 夏は2人で日本代表のユニホームを着る。それがこの兄弟の今の目標だ。

「強気の姿勢」で攻めた謙太

今シーズンに懸ける思いが強かった謙太。「冬の練習が高いレベルで積めた」ことが、今季の好記録につながった
今シーズンに懸ける思いが強かった謙太。「冬の練習が高いレベルで積めた」ことが、今季の好記録につながった【写真は共同】

 入社間もないこともあり、ともにここまでは学生時代の練習をベースにしてメニューを組んでいる。東京を拠点に活動している2人を指導する川嶋伸次旭化成コーチも「冬から世界選手権の標準記録を突破することを目標に練習し、結果も出ていますので、その流れを引き継いでいます」と練習内容に大きな変化を加えていないと話す。


 特に謙太はこの春シーズンに懸ける思いが強かった。昨年も4月に1万メートルを27分49秒94で走りながら、日本選手権では4位。5000メートルでアジア大会代表になった紘太の背中を見送っている。今年はなんとしても世界選手権の代表を手にするため、1月の箱根駅伝後はトラックシーズンに向けて徹底的に走り込んできた。


「冬はスピード練習も距離走もかなり高いレベルで積めたと思います。延岡でのレースでも6000メートル以降で昨年までとは違い、余裕を持って走れました。それも練習のタメがあったから。何より最後まで強気で攻められたのが良かったです」


 昨年の時点ですでに日本長距離界のトップレベルにいた謙太だが、時にレースで慎重な姿勢を見せ、順位を落とす場面もあった。本人の言葉を借りれば「甘えが出て無難にまとめようと考えてしまうことがある」のだという。だがゴールデンゲームズが行われる延岡は旭化成のお膝元。詰めかけた多くの観客を前にし、「ここでは恥ずかしいレースはできない」とかつてない思いで挑んだ。


「学生時代から課題としていた弱さを卒業してから少しだけ克服できました。これからもレースでは強気の姿勢を持ち続けられるように。そのためにはやっぱり自信を持てるだけの練習をすることが大切ですね」と、少し照れくさそうに笑った。

「我慢のレース運び」に徹した紘太

我慢のレース運びに徹し、ゴールデンゲームズで標準記録を突破した紘太
我慢のレース運びに徹し、ゴールデンゲームズで標準記録を突破した紘太【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 紘太もレース運びに成長の跡を見せている。ゴールデンゲームズで同走した選手はすべて外国人選手。彼らが刻むハイペースに乗り、無駄な力を使うことなく4000メートルまでレースを展開した。ここで自分から仕掛けたが、残りの距離を一人で押しきれないと判断すると、再度後ろに下がり温存。ラスト1周で力を爆発させた。


「自分も謙太と同じで練習が順調にこなせています。この日は前に出たいという気持ちを我慢して、外国人の背後で力を使わないようにと意識し続けました。狙い通りの走りができたと思います」


 終盤まで無駄な動きをしないで、スタミナを温存すること。これは紘太が学生時代から取り組んでいたテーマだったが、延岡のレースではそれに成功した。


 強気の走りを押し通した謙太に、我慢のレースに徹した紘太。ともに学生時代からの課題を克服し、結果に結びつけている。

加藤康博
1976年埼玉県生まれ。スポーツライター、ノンフィクションライター。国内外の陸上競技に加え、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールといった“フットボール全般”の取材をライフワークとする。スポーツだけでなく、「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント