手倉森監督「日本の可能性を追求する」 U−22コスタリカ戦メンバー発表会見

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外れた悔しさを自チームで表現してほしい

手倉森監督は「外れた悔しさを自チームで表現してほしい」と今回落選したメンバーに奮起を促した 【スポーツナビ】

――先ほども名前が出た前田だが、今季は松本で結果を出している。彼はどういう部分が成長したと感じているか? あと配布された資料によると50%以上出場している関根貴大(浦和レッズ)や小屋松知哉(名古屋グランパス)、小泉慶(新潟)らが選ばれていないが、彼らは今いるメンバーより実績面で劣るから落選したのか?(元川悦子/フリーランス)

手倉森 いやいや、資料に載っている選手は僕の中でみんな候補ですよ。前田に関しては去年の3月以来の招集です。東京ヴェルディから松本に行って、自分を高めるためにもがいた結果、松本でポジションを取れている。プレーの判断のスピードもついてきたし、フィジカルにおける守備面での貢献度も、自分の弱点を克服しようとしているのがよく見て取れる。そのポジションにはたくさん良い選手がいるんですよ。関根もそうだし、小屋松もそうだし。その中で僕が最終的にコスタリカに対して、どういう武器を選ぶかということで今回は前田を選んだということです。そういう意味では今回選ばれなかった選手もぜひ意識を切らさないでほしいというのは、そういった選手たちへのメッセージでもあるんです。コスタリカ戦を見て、「俺だったらこういうことをできる」というのをぜひ奮い起こして、外れた悔しさを自チームで表現してくれることを期待しています。

――コスタリカが(ワールドカップ予選で対戦した)シンガポールみたいに引いてきた場合、手倉森ジャパンの戦術、もしくは監督が持っているマジックを教えてほしい。

手倉森 僕が持っているマジックは筆箱の中に油性ペン1本しかないですよ(笑)。シンガポールのように引いてきた相手に対しては、3月の1次予選である程度シミュレーションできたと思っています。得点をあまりできませんでしたけれども、あの環境の中である程度コントロールしながら、試合をしたというのはあります。今回引かれた場合、あの大会でシミュレーションできたことを表現できればなと思っています。攻撃のコンビネーション、選手たちのポジションチェンジ、広がりが必要な意味というのはU−22の選手たちも十分理解しています。ただ、コスタリカは前から来るときと引くときとでけっこうメリハリがあるチームなんですよ。いろいろな戦術でめまぐるしく駆け引きをすることになってくると思うし、僕自身も楽しみにしています。攻撃と守備どっちか一辺倒になることはないと思います。

霜田技術委員長が募らせた危機感

日本サッカーのシステムについて危機感を示した霜田技術委員長 【スポーツナビ】

――手倉森監督と霜田委員長にお聞きしたい。出場記録のリストは非常に興味深いが、全般的な傾向として、五輪前年ということを考えて、この数値はどう評価しているのか? 4年前のロンドン五輪のときとも比較していると思うが、その傾向はどう考えているのか?

霜田 ロンドンのときもずっとチームに帯同していたので、当時の関塚(隆)監督といろいろお話しました。そのときも、どうしてもこの年代はなかなか公式戦を経験できない、というのがあり、本当に見たい選手を見に行く場所がないときもありました。大学で試合に出ている選手のほうが、試合をやっているところを見ることができました。J1ではなかなか試合に出られなくて、J2に行くと試合に出られるようになる。そうしたことで選手をセレクションする試合を見に行くことで苦労していた思い出があります。そうした状態からすると今回の数字は非常に高くなっていると思います。J1、J2で30%、40%出ている選手がだいぶ増えました。

 あとは試合に出るのが当然で、そこでどういうパフォーマンスをするかという次のステップに来ているのかと思います。ただ先ほどもありましたが、所属クラブで試合に出ていれば自動的に五輪代表に選ばれるわけではないので、あくまで私たちが望んでいるのは、五輪に選ばれるような選手がたくさん試合に出ている中で、出ている選手が競争して、五輪代表に入ってくるということ。それが理想的な形だと思っていますが、そこに行くにはまだ時間がかかるかなと思っています。

 日本サッカー界の特徴として、18歳〜21歳の選手たちになかなか公式戦を経験させることができないという点があります。これがブンデスリーガに行けば、20歳の選手も19歳の選手も週末にどこかしらで試合に出場する。どこのカテゴリーでもいいから週末必ず90分の試合をやるというシステムを日本でも作る必要があると思っています。Jリーグの強化担当者ともそういう話をしていますし、ただ五輪の強化だけではなく、18歳〜21歳の選手たちを公式戦に出すシステムをもうちょっと早く国全体で考えていかないとまずいかなとは思っています。ただ、だいぶ選手たちが頑張って試合に出られるようになってきて、今回呼ばれているという状況になっています。

手倉森 こうやって出場時間を見てみると、やっぱりこの年代は少ないなと感じます。ただ、出る出ないというのはチームの事情にもよりますし、悪い選手だから出ていないというわけでもありません。大事なのは僕が選んだときに、僕のチームで活躍できるかということです。僕はそっちの方も考えています。もちろん出場していればコンディションは良いはずです。実際にコンディションが良くても、僕が求めた戦術をやれるかはまた別の話になってくる。例に挙げれば中島なんかは来たときはよくやってくれているし、理解のある選手だと思います。僕のところでは活躍してくれるだろうと思っています。

――今後予選などで相手に先制されて、守られるということがあると思う。この間のシンガポール戦をスタンドから見ていてどう感じたか? 霜田さんはベンチに入る予定はあるのか?

手倉森 シンガポール戦で僕は上からスカウティングするという役割でした。それでハーフタイムに何が起きているかをハリルホジッチ監督に伝える。その中でチャンスはたくさんありましたが、決め切れない。時間がたつにつれてポジション修正をこうしたほうがいいんじゃないかという話をハーフタイムにしましたけれど、結局取れなかったというのは残念でした。監督はおそらく僕がU−22の監督をしているということで、監督目線で伝えてほしいという期待だったと思いますから、僕は監督の求める役割をこなしたと思っていますし、終わってから引かれた相手に対する検討はしました。選手間の幅と厚み、そして斜めのパスというキーワードを共有して、お互いにやっていかなければダメですねという話をしました。

霜田 ベンチ入りのスタッフの役割はすべて監督が決めています。私がベンチに入るのも監督の指示やリクエストがあったときです。もちろん大仁(邦彌)会長や協会とも話し合った結果、私は私の役割でベンチに入りました。A代表では手倉森コーチとなりますけれど、手倉森コーチも自身の役割があります。もちろん90分間、ハリルホジッチ監督のそばにいて、一挙手一投足を手倉森コーチが生で感じることは間違いなく良いことですが、合宿やミーティングで監督同士のコミュニケーションは十分に取れているので、ベンチに座っていないからそういう経験ができないということはないと私は思っています。1人1人ベンチでの役割が変わります。私は私の役割をやりながらベンチに座っていますけれど、今後も予選を含めて監督と皆の役割を決めていくことになると思います。

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