予選で見えた手倉森サッカーの方向と強み 上積みに必要な所属クラブでの出場機会
無失点で3連勝と結果を残す
「ザ・アジア」の厳しい環境の中で3連勝を収め、予選突破を決めたU−22日本代表 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
マレーシアの地で連日30度を超える酷暑と、東南アジア独特の猛烈なスコールにも見舞われ、さらにピッチ状態も試合をするごとに劣化していった。加えて、中1日の3連戦。「ザ・アジア」(手倉森誠監督)な環境の中で若い選手たちがキッチリと結果を出したことはまず評価されるべきだろう。
マカオはもちろん、ベトナムとマレーシアも日本をリスペクトして、徹底して守りを固めてきた。大会が始まる前は、もう少しフラットに殴り合う時間もあるかと思っていたのだが、マレーシアなどは0−1で負けているにもかかわらず攻勢をしかけることなく、タイムアップを待った。ベトナムの三浦俊也監督が「日本とは個々のクオリティーに歴然たる差がある」と言い切ったように確かに力の差もあった。それだけに3連勝という結果を過大評価はできない。ただ、それでも嫌らしくワンチャンスだけを狙ってくる相手に対して無失点で乗り切った意味は小さくない。「守備の部分では手応えもある」という主将のMF遠藤航の言葉は本音だろう。
バランスとコントロールが必要
バランスとコントロールを求める手倉森監督。1−0の辛勝にも、指揮官の志向するサッカーがうかがえる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
「攻撃力を上げて点を取り倒して勝てれば強さを示せるかと言えば、目指している『世界』を見たときに、そうでもない。バランスとコントロールが必要である」
1−0の辛勝となったマレーシア戦後、手倉森誠監督はそんな言葉を残した。言い方はちょっと分かりにくいが、要するに攻めでも守りでもない、「真ん中を目指す」という心構えの話である。相手の攻撃陣にクオリティーがないからと攻め一辺倒に人数をかけて大量得点を奪って勝ったとしても、その戦い方は先のステージで通用しない。それならば、この日のマレーシアのようにワンランク力が落ちる相手であっても、攻守のバランスに配慮しながら試合を進めていく。そういうサッカーを志向するということだ。相手が出て来ないなら、無理にはいかない。ましてやリードしているならば。
解釈によっては、アジアに対しても弱者のスタンスをどこかに残すということでもある。
個人のカウンター対応に課題を残す
マレーシア戦では個人のカウンター対応という課題が見えた。最終予選に向けては、足りないものも多い 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
もっとも、マレーシア戦は個人のカウンター対応という意味ではむしろ課題も見え隠れした試合で、実際に相手の速攻からグループで崩されて決定機も作られてしまっている。もう少し、個の力がある相手、来年1月の五輪最終予選では当然いるであろうレベルのFWを向こうに回したときにどうかというのは、また違う問題も出てくるだろう。そもそも、「これくらいボールを握れたときに追加点を取れるようになっていかなくてはいけない」(手倉森監督)のも、また確かだ。
要するに、まだ足りないのだ。