「里崎2世」は求めていない―― 田村と吉田、若き2人が争う正捕手の座
投手からの信頼を勝ち取るには……
打率2割4分2厘だが、14日の巨人戦ではプロ初のサヨナラ打を放った吉田 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
「田村は高校時代から大舞台を踏んでいる選手。度胸が良く、守っているときに弱気な姿勢を見せないところがいいですね」
捕手が不安がっていると、それが投手や野手に伝染する。捕手には、どっしり構えることが求められる。その点、田村はしぐさがどっしりしているという。
一方で、課題についても指摘する。
「スローイングは安定してきましたが、キャッチングやブロッキング(ワンバウンドの投球を体で止めること)ではまだまだ上を目指さないといけません。現状に満足せず、毎日の積み重ねをさせているところです」
また、吉田についてはこう見ている。
「吉田の一番良いところは、肩が強いところです。彼は日大三高、立正大という名門で育ってきましたが、プロに入ってからこれまでに試合に出場するなかで、プロとアマチュアの差を実感しているところでしょう」
2人に共通した課題もある。それは、「投手に信頼される捕手になる」ということだ。そのために必要なことは、何か。吉鶴コーチは2つのことを挙げる。
「しっかりしたブロッキングをして投手に安心して低めに投げてもらうことや、配球で投手の良いところを引き出すこと。まずはそうした技術面が大事です。そして、その技術以上に大事なのが、練習態度や言動です。投手はそういう部分まで見ているので、姿勢からも信頼を勝ち取らないといけません」
1試合1試合の経験が財産に
13日の巨人戦ではプロ初となる決勝本塁打を放ちお立ち台にも上がった田村(中央) 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
「ポジションは1つしかないですからね。『出たい』『負けられない』というのはあります。でも、先は長いと思うので、1日1日、やれることをしっかりやっていきたいと思っています。試合に勝つこと、勝てる試合を作るということが一番大事ですから」
田村と吉田の競争は、まだしばらく続きそうだ。吉鶴コーチは、2人に期待をかける。
「2人で切磋琢磨(せっさたくま)すれば、技術面、精神面、体力面が向上すると思います。『コイツには負けたくない』という気持ちが出てこなければいけない。プロは結果が出なければクビになる厳しい世界ですから。2人には頑張ってもらわないとね」
そして、表情を緩めてこう言った。
「田村と吉田は恵まれていると思うんですよね。捕手として何度も日本一を経験している伊東監督の下で、捕手を務めることができるんですから」
田村と吉田にとって、1試合1試合の経験が財産となるはずだ。彼らが競争のなかでどんな成長を見せるのか。そして、どちらが競争を勝ち抜いて正捕手となるのか――。2人の若き司令塔の今後を見守りたい。