南野拓実、ザルツブルク1年目の収穫 来季を見据える目に宿る自信と覚悟
終盤戦の出来に本人も納得
ザルツブルク移籍から4カ月が経過した南野(左)。チームの2年連続2冠達成に貢献した 【Bongarts/Getty Images】
「いい選手だよ、彼は。それにとても成長している。完全に慣れるのにはまだ時間がかかるかもしれないけれど、ザルツブルクは若い選手を起用するクラブだからね。このまま取り組んでいくと主力になれるはずだ」
南野がオーストリア・ブンデスリーガのレッドブル・ザルツブルクに移籍して4カ月が経った。昨シーズンに続き、ザルツブルクは今季もリーグ、カップ戦を制し、2年連続となる2冠を達成。ヨーロッパリーグでもグループリーグを突破し、決勝トーナメント進出を果たしている(決勝T1回戦でビジャレアルに敗戦)。リーグのレベルでは確かにスペイン、イングランド、ドイツといったトップレベルとは大きな差がある。しかしどんな国でも優勝を義務付けられたチームでレギュラーの座をつかむのは容易なことではない。それだけにリーグの終盤、そんなチームで南野がプレーしている姿に違和感がなくなってきていたことは大きな価値を持っている。
リーグ最終節のオーストリア・ウィーン戦(1−1)後に、「チームに合流したばかりのころと比べたら、プレーに迷いがなくなり、連続性が出てきたと思う」と伝えたところ、「それは自分でも感じています。見ていてそう思ってもらえるぐらい変われたかなと。変われたというか、やることをはっきり理解して、やれるようになってきています」と、うなずきながら答えてくれた。本人も手応えをつかんできている。
プレーが整理され、柔軟な対応を見せる
チームのプレースタイルになじんだ南野は柔軟な対応を見せるようになった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ザルツブルクのプレースタイルには特殊な面があるのも、なじむのに時間を擁する理由の一つ。極端なまでに選手を中央のエリアに集め、細かいダイレクトパスで崩していこうとする。しかしこれはあくまでもスタイルの一つであり、これだけに固執しなければならないわけではない。ザルツブルクの戦い方を知る相手チームが中央の守備を固めてくるのは定石。崩し切れない時にはピッチをワイドに使うことで相手の狙いを外すことも重要になる。しかし南野は「中央に位置しなければ」と常に窮屈なプレーを自分に課してしまっていた。
最近ではこの辺の感覚がうまく整理されてきたようだ。前述のオーストリア・ウィーン戦ではすでに優勝は決めており、また3日後にカップ戦の決勝を控えるために主力は温存され、若手中心のチーム構成になっていた。そんな状況でフル出場した南野は、とても柔軟なプレーを見せていた。相手守備に手を焼き、自分たちがリズムを作れない時間帯は一度引いてボールを受けて展開を落ち着かせる。一度サイドでボールを受けて相手守備を動かしてから、中央のスペースに入り込んでいく。相手守備がラインを上げたら、その後ろのスペースに飛び出していく。常に決定的なチャンスを狙いながらも、不用意なミスでボールを失わないようにケアをする。特筆すべきは、どんなに深い位置からでもチャンスとなると必ずゴール前にダッシュで駆け上がってくる点だろう。そしてボールが来なくてもまた黙々と自分のポジションに戻っていく。