Aロッドを変えた“空白の1年” 全米の注目を集め続ける球界最大の悪役
“理想”に近いここまでのプレー
1年間の出場停止明けとなった今季、ここまで11本塁打を放つなど予想以上の成績を残しているロドリゲス 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
禁止薬物使用事件で1年間の出場停止処分を受けたAロッドが、今季から復帰した。加齢(39歳)、長いブランク明けという事情もあり、“まともにプレーできず、すぐ解雇されてしまうのでは?”と予測する声も少なくなかった。
しかし、ふたを開けてみれば、7月に40歳を迎えるスラッガーは誰の予想をも上回る活躍を続けている。11本塁打はチーム2位で、出塁率3割7分4厘、OPS.940はどちらも上質(以下、いずれも記録は27日時点)。特に27日までのホーム6連戦では4試合でマルチ安打を放ち、打率4割5分5厘(22打数10安打)、6得点、1本塁打、4打点と絶好調期間に突入した感がある。27日のロイヤルズ戦では決勝3ランを放ち、同時に通算1995打点でルー・ゲーリック(元ヤンキース)を抜いてア・リーグ史上トップに立った。
「最悪の事態にも備えつつ、最高の結果を望んでいる。理想は打線の中軸に座ってくれることだが、最悪のケースに備えてオフの間に手を打ってある」
開幕前にブライアン・キャッシュマンGMはそう語っていたが、ここまでのロドリゲスのプレーは“理想”の方に近いと言っていい。そして、これほど活躍する選手を無視し続けるのは、誰にとっても難しい。
ブランクが心身に好影響?
「春季キャンプの頃から動きの良さが目立ち、シーズンに入ってもそれは変わっていない。1年のブランクを経験したことが、フィジカル面で良い方に働いたのではないかな。同時に精神的にも落ち着いたように思える。今後、スランプはあるし、疲れ、故障もあるかもしれないが、最終的に少なくとも25本塁打くらいは打つと私は考えている」
ア・リーグ某球団のスカウトにAロッドの好調の要因を尋ねると、そんな答えが返ってきた。近年は故障が多くなっていただけに、出場停止がプラスに働いたという見方は確かに的を射ているように思える。
「(ブランクは)不幸に見えて実はありがたいことだったのだろう。体を休めることができたし、調整方法も変えられた。今はより良い位置にいるし、以前より爆発力が感じられるようになった」
27日のロイヤルズ戦後には、“こう考えるのは変だが”と前置きした上で、ロドリゲス本人もそう認めていた。また、上記のスカウトの言葉通り、復帰後はメンタル面でも出場停止前よりも落ち着いたように見える。
開幕直後から守備位置、打順をたらいまわしにされても、不満を漏らすようなことは一切なかった。5月7日にウィリー・メイズ(元ジャイアンツなど)を抜く通算661号本塁打を打った際、記録更新時に手にできるはずだった600万ドル(約7億4000万円)のボーナス支払いをヤンキースが拒否すると伝えられても、「再びこうして野球ができることに感謝している」と笑顔だった。