穴男&穴馬タッグ2000万円演出の大逃げ ストレイトガール「想像超えた」一気差し
「エイジアンウインズでウオッカを負かしたときと同じ」
最後の最後、ゴール寸前で差し切った末脚は藤原英調教師いわく「想像を超えていた」 【スポーツナビ】
昨年はヴィクトリアマイル3着の好走も光るが、何より高松宮記念3着、スプリンターズS2着、香港スプリント3着と、強豪牡馬を相手に国内・海外で堂々とGIレースの上位を争ってきた。そこでもまれてきたタフネスさが、届きそうで届かなかったビッグタイトルをついに引き寄せた。
「本当に、待ちに待ったと言いますか、長かったですね。ここまで来れたのはオーナーをはじめ、厩舎スタッフ、関係者の方たちや、ストレイトガールのおかげ。感謝したいです」
藤原英調教師が勝利の味を噛みしめながら振り返った。前走の高松宮記念は13着と、「まったく敗因が把握できなかった」大敗。もしかしたら1つ年齢を重ねたことの衰えかとも考えたが、馬自身は「すごく元気で、動きも若々しい」。あとは天気と枠順さえそろえば好勝負になる、という手応えすらつかめるくらい、ストレイトガールは見事に立ち直っていた。
そして、陣営の祈りは届いた。絶好枠の3枠5番、天候も強い日差しの快晴で、馬場はパンパンの良コンディション。それに加えて、トレーナーの思い描いた作戦と、ジョッキーの考えた作戦までもが一致していたのだ。
「いい枠だったので、僕としては枠のラインそのままを通って、余力をもって抜け出すという競馬を考えていたんですが、パドックで戸崎君と話したときに、彼も同じ考えでした。どこを通ればいいか、戸崎君と一致していたから“ヨシッ!”と思いましたよ。ちょうど、エイジアンウインズも今回と同じような3枠6番で、ウオッカを負かしたときもジョッキーとはそんな感じでしたからね」
まるで、これまであと一歩届かなかったGI勝利のレールに、今度こそ乗ったかのようにすべてが思惑通り、狙い通りに進んでいたストレイトガール。ただ、1つ大きな誤算があったとすれば、それは調教師、騎手が口をそろえて語ったミナレット大逃げの展開。事実、このハイペースに狂わされてしまったのか、中団から後方に控えた人気勢は全滅し、ストレイトガールの直後を進んでいた1番人気ヌーヴォレコルトすらも6着に沈んでしまった。
しかし、まさかの展開にも惑わされず、自身の能力を出し切ったストレイトガールのこの勝利は、これまで牡馬と激闘を繰り広げながら培ってきた経験、そこで身に付けた逞しさ所以だろう。藤原英調教師はそういった戦歴を思い返しながら、「たまたま勝ったわけではないと思います。必然性があると思っていますから」と胸を張った。そして、最後の最後、ゴール寸前の土壇場で差し切ったあの鮮烈な末脚は「こちらの想像を超えていた」伸びだったという。
有終の美へ、再び香港挑戦も視野に
ストレイトガールは有終の美へ向けて香港も視野、戸崎は次週にも大仕事が待っている 【スポーツナビ】
「もう今年で最後だと思いますから、どこを最後の目標とするかですね。その目標を立てて、次に使うとしたらそのレースのステップになると思います。暮れにもう一度香港に行きたい気持ちもありますし、また男馬に挑戦したい気持ちもあります。そのあたりはオーナーと相談してからですね」
待望の大きな勲章を手にし、6歳にしてますます強さに磨きをかけたストレイトガール。有終の美を飾るべく、そこへと続く花道をまっすぐに突き進むだけだ。
一方、殊勲の手綱を握った戸崎も、次週はルージュバックで挑むオークスなど、大きな仕事がまだまだ待っている。この春のGI戦線はそのルージュバックで9着に敗れた桜花賞をはじめ、人気馬に騎乗しながら先週まで連対ゼロと、今一つ乗り切れないでいた。しかし今回の勝利が、1つのきっかけを与える大きな1勝となるかもしれない。
「GIでもたくさんいい馬に乗せていただいているのに結果が出せず、反省ばかり。情けない競馬ばかりしているなと思っていました。でも、ようやくここでGIを勝つことができて本当に嬉しいですし、この勢いで1つ1つのレースを大事に、ミスのないように乗っていきたいですね」
再び勢いと勝利の自信を手にした戸崎が駆るルージュバックよ、大反撃の樫となるか。いや、勢いと言えば、同じ馬主・勝負服のストレイトガールから勝利のバトンを受け取った桜花賞馬レッツゴードンキにこそ分があるのかもしれない。次週の府中も、熱い牝馬の戦いが見られることは間違いなさそうだ。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)