メッシとグアルディオラの再会 CL準決勝で実現する師弟対決

お互いをリスペクトし合う関係

2人は今も変わらずお互いをリスペクトし合っている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 バルセロナがジョゼ・モウリーニョ率いるレアル・マドリーを5−0で破った試合も、今では遠い昔の記憶のように思える。バイエルン・ミュンヘンを4−0で下したチャンピオンズリーグ(CL)の一戦もそうだ。当時のメッシはまだ右ウイングでプレーしていた。その後グアルディオラが考案した“ファルソヌエベ(偽9番)”のシステムはバルセロナにとてつもない成功をもたらした反面、指揮官にとってはズラタン・イブラヒモビッチやダビド・ビジャといったストライカーの獲得がメッシにとっての障害となり得るという、新たな問題を抱えることにもつながった。

 今季のメッシは再び右ウイングでプレーするようになったが、実際はグアルディオラ時代より中央寄りのプレーエリアを幅広く動く“偽ウイング”として、チーム全体を動かす役割を担っている。グアルディオラも変わった。今の彼はドイツ語を流ちょうに操るようになっただけでなく、自身とは異なる伝統を持ちながらも時代の変化に対応する必要に迫られていたバイエルンのメンタリティーとフットボール哲学を着実に変化させている。

 直接の理由ではないにせよ、恐らくグアルディオラがバルセロナを出て行くことを決めた最大の要因はメッシにあった。1年目に全てを勝ち取った後もチームのレベルを維持すべく苦心し、厳しいプレッシャーにさらされる日々が続く中、いち選手の立場を超越したメッシの存在をコントロールし切れなくなったこともあり、彼は一度ピッチを離れて充電期間を設け、その後に新たな挑戦を模索するのが最善だと判断するに至ったのだ。

 それでも2人は、今も変わらずお互いをリスペクトし合っている。そのことを裏付ける言葉など必要ない。3月のバルセロナ対マンチェスター・シティ戦をカンプノウ(バルセロナのホームスタジアム)のスタンドで観戦した際、まるで少年のようにメッシの一挙手一投足を堪能していたグアルディオラの姿を見れば分かることだ。グアルディオラのラストマッチとなったコパ・デル・レイ(国王杯)のアスレティック・ビルバオ戦にて、2人が交わした抱擁もそうだ。

 メッシのような選手を指導することはこの先二度とない。グアルディオラはそのことを知っている。そしてメッシも、自身のプレーに最も大きな影響を与えた指導者がグアルディオラであることをよく分かっている。

注目が集まるCLの準決勝

CL準決勝で2人は再会する。そのニュースは世界中で取り上げられることだろう 【写真:ロイター/アフロ】

 メッシとグアルディオラ。いまや随分と疎遠な関係になってしまった2人のスーパースターは、近々CL準決勝という大舞台で初めて対戦する。一人はこれまで常にそうであったようにバルセロナのプレーヤーとして、もう一人はバルセロナで黄金期を築いた後で新天地に選んだ、バイエルンの監督として。

 グアルディオラは元バルセロナのチアゴ・アルカンタラを含めたテクニックの高いクラックをそろえ、ポゼッションスタイルを身につけた“新生バイエルン”を率いてカンプノウに帰ってくる。メッシはグアルディオラの選手時代の同僚であるルイス・エンリケの指揮下、チームの刷新の過程にあるバルセロナのリーダーとして恩師を迎え入れる。

 それぞれバイエルン、バルセロナの一員として2人が再会の機会を得ることは、長い人生における1つの巡り合わせに過ぎない。それでも再びカンプノウにて実現する両者の共演は、無数のカメラのフラッシュやマイクに囲まれ、世界中のニュースで取り上げられることになるだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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