花城桜子が思い描く明るい未来 フィギュアスケート育成の現場から(11)

松原孝臣

「フィギュアスケートは無限」

「沖縄のスケート環境につながるようなことが将来できれば」と花城 【提供:花城桜子】

 高校1年の2014年1月、青森県で行われた高校総体に出場する。スケート競技では、沖縄県史上初の出場となった。

 今年1月には、再び高校総体に出場を果たした。
「仙台のときに一緒に滑っていた子と男子のフリーを観戦したり、(仙台に引っ越す前に通っていた)川越スケートセンターで一緒に練習していた子と再会して話したり、楽しかったですね」

 高校3年になった今年は、いったん、競技から離れると言う。
「今は受験勉強に切り替えていて、競技は1年お休みします。でも、まったく氷から離れるとリフレッシュできないし、大学に入学したあとに早く復帰できるようにトレーニングとして続けていきたいです」

 その言葉には、フィギュアスケートへの強い愛着が感じられる。
 すると、花城はこう答えた。

「スケートって、陸上にはない動きができるじゃないですか。稼動域が違うというのか、縦に足が動く。そうしたところが魅力の原点にあります。それはスケートを始めたときから、変わらずに思っていますね。

 そして、いろいろなものがつまっているということ。芸術性も問われるし、スピン・スパイラルは柔軟性、ジャンプは筋力と、何か一つに特化しても強くなれない、総合力が大切なところも魅力です。それに、フィギュアスケートは無限ですよね。ジャンプをとってみても、今は4回転が最高でも、それが限度というわけではない。

 そういえば、高橋大輔選手のステップをまねようとしてみたことがあるんです。いやもう、ものすごく難しいことをやっているんですよね。そう考えると、先が尽きないです。やめられない」

尽きない思い

 変わることのないフィギュアスケートへの思いがあるから、沖縄県に移り住んだ今、考えることもある。

「テニスの伊達公子さんがいらっしゃるじゃないですか。伊達さん、一生に一度でいいからテニスを味わってほしいと、全国をまわって教室を開いていたんですね。それに自分も参加したことがあるんです。そういうふうに、ほかの競技は人口を増やすために頑張っているけれど、フィギュアスケートはあまりそういう機会がないと思うんです。

 たしかに競技としては費用がかかりますが、スケートの楽しみ方は競技だけじゃない。週末だけ滑るのもありだし、自分なりにうまくなりたいという楽しみもあります。滑る楽しさ、その体験をしてほしいと思う。だから自分自身で具体的にできることを考えて行動に移すようにしています。

 一般のスケートを楽しみにきている人の中にはスケート靴の紐をしめるのが怖くてゆるくしている人もいます。でも、ぐらぐら揺れて捻挫とかにつながるのでアドバイスしたり、ちっちゃい子の靴紐はしめ直してあげたり。昔使っていた靴を貸してあげて、貸し靴との違いを知ってもらったり」

 そして、こう付け加えた。
「沖縄に来て、たくさんの方に支えてもらいました。だから恩返しとして、沖縄のスケート環境につながるようなことが将来できればと思っています」

 思いは尽きない。
 沖縄の、フィギュアスケートの明るい未来を思い描いている。
 それは自身の明るい未来でもあった。

(第12回に続く/文中敬称略)

※「フィギュアスケート育成の現場から」シリーズは、来シーズン開幕に合わせて再開いたします。

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著者プロフィール

1967年、東京都生まれ。フリーライター・編集者。大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後「Number」の編集に10年携わり、再びフリーに。五輪競技を中心に執筆を続け、夏季は'04年アテネ、'08年北京、'12年ロンドン、冬季は'02年ソルトレイクシティ、'06年トリノ、'10年バンクーバー、'14年ソチと現地で取材にあたる。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)『フライングガールズ−高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦−』(文藝春秋)など。7月に『メダリストに学ぶ 前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)を刊行。

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