川口悠子が語るキャリアとロシア 「大きな決断ではなかった」国籍変更

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FS後に流した涙の理由

世界国別対抗戦に出場したペアの川口悠子が、自身のキャリアとロシアのフィギュア事情を語った 【坂本清】

 4月16日から東京・国立代々木競技場第一体育館で行われたフィギュアスケートの世界国別対抗戦。ロシアチームの一員としてペアのフリースケーティング(FS)に臨んだ川口悠子は、演技後に涙を流していた。

「大好きなFSのプログラム、しかも今季最後の演技で(トリプルトウループを)転倒してしまって悔しいです」

 川口にとってFSの『マンフレッド交響曲』は特に思い入れのあるプログラムだ。本来は昨年のソチ五輪に向けて用意していたものだったが、ペアを組むアレクサンドル・スミルノフが2013年10月の試合中に負傷し、シーズンすべての試合を欠場することになってしまった。当初は昨季限りでの引退を予定していたが、「このプログラムを滑りたい一心で」今季も現役続行を決断した。

 そんなプログラムを、シーズン最終戦でミスしてしまったのだから、その心中は想像に難くない。とはいえ演技後の取材対応では、声を詰まらせながらも今季をポジティブに振り返った。

「山あり谷ありでしたが、復帰戦としては良かったし、良いシーズンでした。滑りたかったプログラムを何度も滑ることができたので、満足しています。今大会はみんなの演技を見ることができたし、チームとして一致団結できたので、自分もロシアチームの一員なんだなと感じられたし、楽しかったです」

「山あり谷ありだった」シーズン

世界国別対抗戦後に行われたインタビューでは、FSでの涙から一転、穏やかな表情を見せた 【スポーツナビ】

 09年にロシア国籍を取得してから6年。昨年11月で33歳になった。その間にバンクーバー五輪出場(結果は4位)、欧州選手権での優勝、世界選手権での銅メダル獲得など実績を積み重ねてきた。しかし、前述のように昨季のソチ五輪出場はかなわず。川口は当時を「絶望的な気持ちだった」と振り返る。

「ソチ五輪を目指して練習していたので、その目標がなくなってすごくどうしようもない気分でした。彼(スミルノフ)はけがをしていたとはいえ、まったく滑っていなかったわけではないので、ショーにも出ていたし、ひたすら最後の最後まで五輪に出場できることを祈っていましたね」

復帰戦で優勝するなど幸先良くスタートした今季だったが、後半は不調が続き結果を残すことができず 【坂本清】

 現役続行を決断した今季、復帰戦のネーベルホルン杯で優勝。続くグランプリ(GP)シリーズのスケートアメリカではスロー4回転サルコウを決めるなど、FSの自己ベストを更新する圧巻の演技で勝利を飾った。3年ぶりの出場となったNHK杯では2位。「いかに自分が日本で集中できないかが分かりました。日本で滑れることはうれしいんですけど、周りの日本語をシャットアウトできていないということは集中できていない証拠」と、苦笑いを浮かべながら反省の弁を述べた。

 GPファイナルは6位という失意の結果に終わったが、年が明けた1月の欧州選手権では5年ぶり2度目の優勝。しかし、本人が「山あり谷ありのシーズンだった」と語ったように、世界選手権では転倒するミスを犯すなど演技に精彩を欠き、5位に沈み表彰台を逃した。

 シーズン最終戦となった世界国別対抗戦でも不調は続く。川口組はショートプログラムで3位、FSで4位に終わった。ロシアは同大会で初めて2位に入ったものの、チームのキャプテンを務めたスミルノフが「男子シングルとペアは点数を稼ぐ余地がある」とコメントするなど、川口組は本来の出来とは程遠かった。

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