川淵チェアマンが評議員らに熱弁振るう 「皆が心を1つにしないと変わらない」

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スポーツ界に横串を刺したい

川淵チェアマンが願っているのは、縦割りのスポーツ界に横串を刺すことだという 【©JAPAN 2024 TASKFORCE】

 以下は質疑応答。

――鹿児島の者です。川淵チェアマンがメディアを通してさまざまな発信をしてくれているので、NBDL(ナショナル・バスケットボール・デベロップメント・リーグ)で一番貧乏なクラブであるレノヴァ鹿児島が行政でも注目を浴びています。過去にアリーナの建設が頓挫したのですが、再び何とか作れないかという動きが出てきています。九州はbjリーグとNBL、NBDLが1つにまとまっています。地域密着を超えた地方密着です。質問というよりは感謝の言葉になります。

川淵 アリーナを5000人にすると言ったら最初は猛反発されたんですよ。できているじゃないですか。知事や市長を動かす盛り上がりがあれば、彼らも動かざるを得ないわけです。動かざるを得ない状況に持っていくことが求められる。僕が1部、2部、3部に分けると言ったら、2部に落とされたチームはつぶれるんじゃないかと思うチームがすごく多いんですね。そんなにファンが信用できないのかと思います。そんなことはありません。ファンを信頼して、魅力あるチームを作っていくという信念がはっきりしていればファンも付いていきます。ぜひ鹿児島は今後も頑張ってください。

――これまで評議員を務めていた者です。私は今まで常に理事会に対し、あえて苦言を呈していました。2つお聞きしたいと思います。タスクフォースの下に作業部隊はあるのか? あるとしたらどういう仕事をしているのか? もう1つは理事の人数を減らし、評議員の人数は増やしたいという話をされましたが、人選はどういう方針かつやり方で決めるのでしょうか?

川淵 作業部隊はグループを作ってやっています。さらに3月中にこういう基準で条件を出して、ヒアリングします。ワーキンググループもありますが、もう少し充実させたいと思っています。理事は一気呵成に減らすことは地方の理解も得ないといけない。トップリーグのオーナーが5人くらい、会長、財務担当、総務事務局長と、どういう人材がいるのかは悩ましいですが、理事の最低人数はそういう感じだと思います。

 Jリーグも全面的に協力してくれます。今のスポーツ界はすべて縦割りです。この状態になんとか横串を刺したいというのが僕の願いです。今回はサッカー界とバスケットボール界で交流して、ほかの競技団体にも広がってほしいなと思っています。Jリーグはそれを理解してくれています。バスケットボール界の発展のためにサッカー界も力を貸そうと。ガバナンスに関してはバスケットボール協会だけが悪いわけではないです。相当悪い競技団体があることも事実です。これを全部変えないといけないと僕は思っています。そのことも含めて前向きにしっかりやっていきましょう。

――沖縄の者です。組織の再構築、地方を強化していくということで、9地域ある中でいろいろな情報をもんでもらえればと思います。47都道府県集まるのは費用もかかるし、評議員の数は検討していただきたいです。外部の方の意見は貴重で、地方の強化も一生懸命やっていただきたいですし、僕らも一生懸命やっていきたい。特に県よりも市町村の方がbjリーグも含めて非常に協力的です。アリーナの話も出ています。そんな中で僕らが目指すのは沖縄がモデルになること。トップを走る県になりたいと思っていますので力を貸していただければと思います。

川淵 9地域の代表は新しい組織の中で大事にしていかなければいけないと思います。9地域のまとめ方はより効率的にできればいいですね。

ジュニアユースのチームを持つこと

――岩手の者です。統一リーグを作ることは当然強化の1番です。その中で強化全体の底辺、ミニバスケットボールのあり方は?

川淵 強化のやり方、コーチライセンスのやり方は思い切った施策を講じる必要があるのかなと。中体連・高体連が選手の育成に関与しているのは全体的にはマイナスだなと思います。なので各都道府県協会が中心になって選手を育てる。強化の方法に関してはやはり若い選手をトップリーグで試合をさせる機会をどうやって作るのか。大学の責任者とトップリーグの責任者が話し合って、週に2、3回でも練習に行けるようにできればいいと思います。そうすればその選手が大学に帰ったときに全体のレベルアップにもつながる。

 もう1つはトップリーグのチームはジュニアユースのチームを持つこと。練習参加がなかなか難しいこともあって抵抗があるだろうけれど、トップチームの一流の指導者に習うのと、学校の先生に習うのとでは、選手の上達の差にもつながる。中には素晴らしい先生もいるだろうけれど、トップの指導者に指導を受けたほうが成長につながるのは間違いないです。

――育成の担当をしています。アンダーカテゴリーの多くは学校教育、部活で育ってきています。指導者も教員であることが多い。それはわれわれの文化として大事にしていきたい部分でもあります。若い子たちの育成について、協会が事業化することとどう折り合いをつけていけばいいのでしょうか?

川淵 学校教育の中で良い選手が育てば問題ないんですけれど、先生がバスケットボールの指導に必ずしも秀でているわけではないと思います。日本の子どもたちは1週間その競技の練習に没頭しなければいけないというのが大問題で、月水金はサッカーをやってあとはバスケットボールをやるというのでもいいんです。米国は7月4日の独立記念日に子どもたちのオールスターゲームがあって、それが終わったら野球をやってはいけなくて、他の競技をやるんですよ。2つの競技でも超一流の選手が米国にはたくさんいる。

 日本の指導者は他のスポーツに子どもが行くと辞めさせるわけですよね。そういうことも僕は変えたいなと思っています。優秀な子どもたちには3日は他のスポーツをやらせて、あとの残りはレベルの高い中でバスケットボールをさせればいい。そういう理解を日本全国に広げていかなければいけないんです。欧州のサッカー選手だって、1日の短い時間しか練習していませんよ。それだってうまくなるんだから。没頭させることで燃え尽き症候群になって、そのスポーツが面白くなくなる。1日やらせなかったら意欲も湧いてくるもの。レベルの高い選手が集まる中でプレーさせてあげられる環境を作ることが大事だと思います。

――東京の者です。ガバナンスについては二重構造という話があります。連盟と協会が独立して大会を行ってしまう。東京にいるとやはり全国大会が行われるケースが多い。連盟の力が強いから全国大会をやることになります。日本協会が変わるにあたって、地方協会もどう変わっていくべきなのか想像はつくんですけれど、上の方から理念がきちんと下りてくるべきだとも思います。

川淵 トップリーグの試合が土日にあります。その日の夜に小中学生が試合をするとは思わないですけれど、試合がある日は避けて、他の日にするとかね。バスケットボール協会がこういうことを絶対にやらなければならないという形がない。上からの指令には絶対に従わなければならないというガバナンスにする必要があります。各連盟がやる大会もバランスを見て、みんなが理解する中で決まっていくしくみに変わっていかないといけないですよね。その辺を含めて検討していきます。

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