元NFL選手によるヨガと瞑想のクラス 事故によるキャリア断念と新たな出会い

猿渡由紀

【猿渡由紀】

【猿渡由紀】

 NFLの選手から、ヨガと瞑想のインストラクターへ。そんなユニークな経歴をもつのが、キース・ミッチェルだ。ニューオリンズ・セインツ、ヒューストン・テキサンズ、ジャクソンビル・ジャガーズでプレーしたミッチェルは、29歳の時、試合中の事故で背骨を負傷し、フットボール選手としてのキャリアを断念させられる。そんな彼に新しい視点を与えてくれたのが、ヨガと瞑想だった。

 現在L.A.にベースを置くミッチェルは、スポーツ選手にヨガを教えたり、チャリティ団体を通じて子供たちに瞑想を教えたりするほか、さまざまなイベントで、彼の目覚めを語り伝えている。今月初め、ウエストL.A.の瞑想スタジオ“Unplug Meditation”で行われた特別クラスも、大盛況に終わった。そのクラスの模様をリポートする。

絶頂期の思わぬ事故、自殺も考えた末に出会ったのは呼吸法と瞑想

 この日のクラスは、まず、ミッチェルが、メロディ・ビーティの『Journey to the Heart』の一部を朗読するところから始まった。

 部屋の照明は低く落とされ、バックグラウンドには、心落ち着く音楽が流れている。続いて、彼は、自分が瞑想に出会うことになるまでの、ドラマチックな背景を語った。

 ミッチェルは、テキサス育ち。両親は敬虔(けいけん)なクリスチャンで、日曜には必ず教会に行き、その後は家族そろってダラス・カウボーイズの試合を見るのがお決まりだった。この時だけは、いつも騒がしい家族が一緒になって試合を応援する様子を見て、自分もぜひこんな喜びを提供する側になりたいと思ったと、彼は振り返る。 

 大学フットボールで活躍した彼は、ニューオリンズ・セインツに入団、その後、ヒューストン・テキサンズでプレーし、ジャクソンビル・ジャガーズに移籍した。彼が試合中に大けがをしたのは、ジャガーズに移った最初のシーズンだ。

 その事故が起こった瞬間、ミッチェルがまず思ったのは、「なんて恥ずかしいことを自分はやってしまったんだ」ということ。それまで試合を欠場したこともなく、まじめにプレーしてきた彼にとって、ケガで倒れるなどということは許せなかったのだ。

 しかし、事態は、彼が思っていたより深刻だった。背骨を負傷した彼は、6カ月間、じっとしたまま、療養することを強いられる。フットボール選手としてのキャリアは、そこで終わってしまった。

「その間、成功とは何かということをずいぶん考えた。当時、僕は3軒の家と6台の車を持っていた。でも、その時の僕は、ひとつの部屋から一歩も動けず、車にも乗れなかったんだよ」

 思いをめぐらせるうちに自殺も考えたという彼を救ったのが、呼吸法トレーニングと、瞑想だった。

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著者プロフィール

月刊女性誌編集者を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビューや映画の撮影現場レポートなどを、日本の雑誌、新聞、オンライン媒体に寄稿する。フィットネスへの関心も高く、渡米直後から毎日ジム通いを開始。ここ10年ほどはアシュタンガヨガに専念しているが、ワークアウトのトレンドはもとより、健康、運動一般に関する新しい情報には、常にアンテナを張っている

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