今井正人に訪れた脱“山の神”の瞬間 マラソンの潜在能力、東京でついに開花
タフさ、後半の粘りに磨きをかけた
14年のニューヨークシティマラソンでは7位と健闘。海外レースを経験し、確実にレベルアップしていった 【写真は共同】
しかし昨年、その能力を開花させる兆しを見せた。2月の別府大分毎日マラソンで初のサブテン(2時間10分切り)を達成。「その1本だけでは意味がない」と2年連続でペースメーカーのいないニューヨークシティマラソンに出場し、序盤から展開の動くレースでタフさを養った。
勝負を狙ったこの東京マラソン前には苦しい局面での粘りを身につけるため、練習で行う40キロ走の後半からチームの後輩である大津顕社を並走させ、どこでスパートをかけられても対応できる力を磨いた。
股関節を動かすイメージを持つようになったのも今年1月になってからだが、「スッと動きに落とせるタイミングがあった」とすぐに自分のものにできたという。
「以前は周りからの期待に応えようという気持ちが強すぎて、うまくかみ合いませんでしたが、最近はいい意味で開き直りが出てきました。心技体3つがそろうのがこの年になりましたが、よく走ったと思います」
森下広一監督は自身の現役時代のベストタイム、2時間8分53秒を上回った愛弟子の快走に笑みを浮かべた。
ここからが本当のマラソンの勝負
「今日のレースもタイムより勝負だけを意識して走りました。トヨタ自動車九州に入ったのも森下監督のもとで、世界と勝負したかったから。記録では上回りましたが、監督は(バルセロナ)五輪で銀メダルを取っていますので、引き続き高い目標をもって前を向いていきます」
ここから本当のマラソンの勝負が始まると表情を引き締めた今井。30キロ以降の世界基準のペースアップに対応するため、フォームに対する意識をさらに変えていくと話した。
30歳にして初めてマラソンで笑顔でのフィニッシュに成功した今井。“山の神”から“マラソンの今井”へ。そのアピールに成功した東京マラソンとなった。