今井正人に訪れた脱“山の神”の瞬間 マラソンの潜在能力、東京でついに開花
世界切符大きく引き寄せる快走
東京マラソンで日本人トップの7位に入った今井正人。期待され続けた30歳の才能がついに開花した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
今大会のペースメーカーは1キロ2分58秒で30キロまで。これは昨年出された大会記録2時間5分42秒の更新を狙うためのもので、日本人には少し厳しいペースだ。だが実際はそこまで上がらず、中間点の通過は1時間3分8秒。レース序盤に松村康平(三菱重工長崎)が後退した以外は、日本人有力選手はほとんどが先頭集団に残る展開となった。
しかしそこからわずかにペースが上がると後退する選手が相次ぎ、25キロの時点で先頭集団に残った日本人は今井と佐藤悠基(日清食品グループ)、佐野広明(Honda)の3名。その後、佐藤も遅れ、30キロでペースメーカーが離脱した時点では今井と佐野の2名となった。
「序盤から両足のすねに張りを感じていました。最初はきつくても落ち着くことが今までにはありましたが、今回はそうならず焦ってしまいました」(松村)
「25キロくらいから足が重くなってしまいました。そこから自分のペースでいこうかと思いましたが、いけるところまで行こうと思って。(体調不良などで)練習不足もあり、それがもろに出てしまいました」(佐藤)
課題の“30キロ以降の走り”を克服
「30キロの時点で今までのマラソンの感覚と違って(体が)動いていました」
今井の30キロから35キロは15分6秒と、25キロから30キロまでとほぼ同じペース。この間、10秒ほどペースアップした7名の海外招待選手には差をつけられたが、35キロ以降は先頭集団から遅れてきたツェガエ・ケベデ、マルコス・ゲネティ(ともにエチオピア)を引き連れ力走。2時間4分台のベストを持つケベデに先着し、7位でフィニッシュした。
「これまでのマラソンでは30キロを過ぎてからは足を前に出すのがやっとでしたが、今回は股関節から動かしていけたので、精神的にも余裕を持つことができました。35キロ以降は何とか踏ん張ったという感じ。(タイムの)落ち込みも最低限に抑えることができたと思います」
マラソン10戦目の今回、“30キロ以降の走り”という課題を克服し、好記録につなげることに成功した。