フライブルク移籍から2年、木下康介の今 U−23監督が見た現在地と未来予想図
「非常に素晴らしい才能を持っている」
フライブルクへの移籍から2年、木下康介の現在地と未来をU−23監督に聞いた(写真はU−19日本代表のときのもの) 【写真:アフロ】
木下がこのクラブに移籍してから2年が経った。時折トップチームの練習に呼ばれ、練習試合に出場したことはあるものの、公式戦デビューはまだない。彼の現在地はどこなのだろうか。どんな未来が待っているのだろうか。木下の「これまで」と「今」と「これから」を尋ねるのに、彼以上にふさわしい人物はいないだろう。
オフィスに通されると、ウォーミングアップ代わりに、ドイツサッカーの成長ぶり、フライブルクにおける育成の取り組みについての雑談を交わす。10年間シュトゥッツプンクト(日本で言うトレセン)のセンター長としてドイツ育成プロジェクトにも関わっていたメタクサスの造詣は深く、どんな質問にも推測を交えずに、明確に自身の考えを言葉にする。
しばらく話した後、木下についてどのように評価しているかを尋ねてみた。
「彼が持つそれぞれの能力を別々に観察すると、非常に素晴らしい才能を持っている。身体が大きく、速い。持久力があり、パワーがある。それぞれの能力にはどれも非常に高いものがある。もし、コウスケが彼の持つ全ての才能を試合の中でうまくまとめあげて発揮することができれば、信じられないほどの可能性を秘めている」
けがに苦しみ、安定感を失う
メタクサスは「コウスケはとても長い期間、けがに苦しまなければならなかった。背中、膝、足、あらゆるところを負傷した」と度重なるけがを理由の最初に挙げた。U−20代表の試合で負傷して以来、治ってはまた別の箇所をけがするという悪循環に苛まれているという。長く実戦から離れると感覚や自信も失いがちになる。
「その通りだ。欠場期が長いことで、プレー感覚も今は欠けている。そうしたこともあり、今はプレーに安定感がない。それに忘れてはならないのは、コウスケは国外から来ているということだ。まだまだ非常に多くのことが頭のなかにある。周りに安らげる家族や友人がいれば、気分転換や気持ちを落ち着けることもできる。力を蓄えることもできる。しかしそれができない。特に長くけがをしている時期は、いろいろなことを考えてしまう。そうなるとサッカーだけに集中できない」
海外でプレーすることの難しさがここにある。うまくいっているときはいい。自分のプレーだけを考えていれば大丈夫だから。しかし一度歯車のかみ合わせが狂うと、再び調子を取り戻すのには周りの支えが必要になる。どんなことでも相談できる人物はどこにでもいるわけではない。とはいえ自分一人の力だけではどうすることもできないことに直面しながら、普段通りの力を発揮することはとても難しい。
メタクサスはうなずきながら、「そうした難しい状況にいることは分かっている。とはいえ怒鳴り散らして強制することなどできない。頭のなかでいろいろなことを無意識のうちに考えてしまうのを簡単にどうにかすることはできないからだ。だからわれわれも彼に十分な時間を与える」と、まずは負傷から解放され身体への心配をなくすこと、そして悩みの種を1つずつ解決していくが大切だと説いた。